[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2017年(平成29年)九州大学後期-数学(理系)[5]


次の条件によって定められる数列 \{a_n\} がある.
a_1=1,a_2=1,a_{n+2}=a_{n+1}+a_n(n=1,2,3,\ldots)
以下の問いに答えよ。

(1) 2 以上の自然数 n に対して,a_{n+2}\gt 2a_n が成り立つことを示せ。

(2) 2 以上の自然数 m は,数列 \{a_n\} の互いに異なる k 個(k\geqq 2)の項の和で表されることを,数学的帰納法によって示せ.

(3) (2) における項の個数 k は,k\lt 2\log_2 m+2 を満たすことを示せ.

2021.01.08記
自然数のフィボナッチ表現(ゼッケンドルフ表示)。

自然数のフィボナッチ表現は2倍取りゲームやワイトホフの2山崩しの必勝法を説明するときに登場する.

ただ、本問は正確にはフィボナッチ表現ではない.例えば、8 のフィボナッチ表現は a_6 であるが、本問 (2) においては、
8=a_6=a_5+a_4=a_5+a_3+a_2=a_5+a_3+a_1 のように一意性をみたさないからである.

以下、解答例を載せておくが、a_1=a_2 であることから、細かい議論(工夫)が必要になってくる.

(1) n\geqq 2a_n は単調増加だから、2a_n\lt a_n+a_{n+1}=a_{n+2} より成立.

(2) (a) m=2 のとき、m=a_2+a_1 より成立する.

(b) 2\leqq m\leqq i について成立すると仮定する.

このとき i\geqq 2 により、2=a_3\leqq a_{j+1}\leqq i \leqq a_{j+2}-1 なる  j\geqq 2 が存在するので,
m=i+1 のとき、1\leqq m-a_{j+1} \leqq a_{j+2}-a_{j+1}=a_{j}\lt a_{j+1} が成立する.

m-a_{j+1} =1 のとき, m=a_1+a_{j+1}j+1\neq 1) と異なる2個の項の和で表現できる.

2\leqq m-a_{j+1}\leqq a_j となりうるのは a_j\geqq 2、つまり j\geqq 3 のときであり,この場合は、仮定より、a_1 から a_{j-1} のうちの少くとも2つの和で表現できるので,i+1 は3個以上の項の和で表現できる.

以上から、m=i+1 のときも題意は成立するので、よって数学的帰納法により,2以上の任意の自然数 m について題意は成立する.

(3) 2^{\frac{k}{2}-1} \lt m を示せば良い.

ここで,a_{k} \lt m \leqq a_{k+1} をみたすとき,ma_1,\ldots,a_k のうちの2個以上 k 個以下の和で表すことができるので、a_k \geqq  2^{\frac{k}{2}-1} を示せば良い.

(a) k が2以上の偶数 2s のとき a_{2s}>2^{s-1} a_2=2^{s-1}>2^{\frac{k}{2}-1} より成立.

(b) k が3以上の奇数 2s+1 のとき a_{2s+1}>2^{s-1} a_3=2^{s}=2^{\frac{k-1}{2}}>2^{\frac{k}{2}-1} より成立.

よって題意は成立する.

あんまり美しくないので、そのうち改良したい.

2022.10.22記
2倍取りゲームについては
数学談話室 倍取りゲーム(pdf)
石取りゲームとFibonacci数
あたりを参照すれば良いだろう.