[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)九州大学前期-数学(理系)[5]

[5]

以下の問いに答えよ.

(1) 自然数 n.k2\leqq k\leqq n-2 をみたすとき,{}_n\mbox{C}_k\gt n であることを示せ.

(2) p素数とする.k\leqq n をみたす自然数の組 (n,k){}_n\mbox{C}_k=p となるものをすべて求めよ.

2021.03.17記

[解答]

(1) 2\leqq k\leqq n-2 であるから,2〜k までの k-1 個の積よりも,
n-k+1〜n-1 までの k-1 個の積の方が大きい.

よって {}_{k}\mbox{P}_{k-1}\lt {}_{n-1}\mbox{P}_{k-1},すなわち k!\lt {}_{n-1}\mbox{P}_{k-1} が成立するので,

{}_n\mbox{C}_k=\dfrac{{}_{n}\mbox{P}_{k}}{k!}=n\times\dfrac{{}_{n-1}\mbox{P}_{k-1}}{k!}\gt n

(2) (i) k=1,n-1 のとき {}_n\mbox{C}_k=n=p より (n,k)=(p,1),(p,p-1)

(ii) 2\leqq k\leqq n-2 のとき
(a) n\geqq p とすると(1)より {}_n\mbox{C}_k\gt n\geqq p より不適.
(b) n\lt p とすると {}_n\mbox{C}_k の計算には p 未満の正の整数のかけ算と割り算からなるので,その結果に素数 p は登場しないので {}_n\mbox{C}_k=p になることはない.

以上から,(n,k)=(p,1),(p,p-1)

{}_n\mbox{C}_kp の倍数となる必要十分条件はKummer の定理により p 進数の足し算 n=(n-k)+k において繰り上がりが丁度1回となることである.

Kummer の定理については
二項係数は2で何回割れるか - 球面倶楽部 零八式 mark II
などを参照.

Kummer の定理で p の倍数である条件を導いても,Kummer の定理は商について何も言わないので、それが p であることを示すには、二項係数の値が p より大きくないことを言わないといけないので,結局は (1) の {}_n\mbox{C}_k\gt n を用いるのが簡明となる.

[大人の解答]

{}_n\mbox{C}_kp の倍数のとき,Kummer の定理により p 進数の足し算n=(n-k)+k において繰り上がりが生ずるので n\geqq p である.

n\gt p とすると {}_n\mbox{C}_k の値は「 1」 または「 n 以上」となるので(証明は[解答]と同じ),これが p となることはない.

よって n=p であり,{}_p\mbox{C}_k=p となるのは (n,k)=(p,1),(p,p-1) のとき

Kummer の定理を使っても、それほど楽になってない.