[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1924年(大正13年)東京帝國大學工學部數學[2]

[2] 三角形の底邊の長さaと,他の二辺の長さの和dとを與へてこれに内切する圓の中心の軌跡を求む.

本問のテーマ
楕円上の点の焦点からの距離
内心の位置ベクトル

2022.08.08記

楕円上の点の焦点からの距離

横長の楕円 \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 上の点 {\rm P}(x,y) について,焦点を {\rm F}(c,0){\rm F}'(-c,0) とすると
{\rm FP}+{\rm F}'{\rm P}=2a{\rm FP}^2-{\rm F}'{\rm P}^2=-4cx
から
{\rm FP}-{\rm F}'{\rm P}=-2\dfrac{c}{a}x
を経由して
{\rm FP}=a-\dfrac{c}{a}x{\rm F}'{\rm P}=a+\dfrac{c}{a}x
となる.

内心の位置ベクトル

{\rm A}(\vec{a}){\rm B}(\vec{b}){\rm C}(\vec{c}){\rm AB}=c{\rm BC}=a{\rm CA}=b である三角形 \rm ABC の内心を \rm I とすると
\vec{\rm OI}=\dfrac{a\vec{a}+b\vec{b}+c\vec{c}}{a+b+c}
となる.

[解答]
a=2Ad=2D とし,B=\sqrt{D^2-A^2} とする.

三角形の底辺を {\rm B}(-A,0){\rm C}(A,0)
と固定すると,残りの頂点の座標 {\rm A}(x,y)\dfrac{x^2}{D^2}+\dfrac{y^2}{B^2}=1 上にあるので,
{\rm A}=(D\cos\theta,B\sin\theta)
とパラメータ表示することができる.このとき,
{\rm AB}=D+A\cos\theta{\rm AC}=D-A\cos\theta
であるから,三角形 \rm ABC の内心を {\rm I}(X,Y) の位置ベクトルは
\vec{\rm OI}=\dfrac{1}{2A+2D}\left(2AD\cos\theta+2A^2\cos\theta,2AB\sin\theta\right)
\vec{\rm OI}=\dfrac{A}{A+D}\left((A+D)\cos\theta,B\sin\theta\right)
となるので,
内心の軌跡は楕円
\dfrac{X^2}{A^2}+\dfrac{Y^2}{\dfrac{A^2B^2}{(A+D)^2}}=1
つまり
\dfrac{X^2}{a^2}+\dfrac{Y^2}{\dfrac{a^2(d^2-a^2)}{(a+d)^2}}=4
となる.

この楕円は {\rm B}(-A,0){\rm C}(A,0) を通る.