[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1924年(大正13年)東京帝國大學工學部數學[1]

[1] 圖の如く縦6條横5條の道路によりて正方形に區劃せられたる市街あり.

(イ) 迂廻することなしに\mbox{A}隅より\mbox{B}隅に至る仕方幾通り有りや.

(ロ) 甲乙兩人同時に\mbox{A}及び\mbox{B}隅を發し迂廻することなしに,夫々\mbox{B}及び\mbox{A}隅に至らんとする時,途中に於て兩人が出會すべき確率(Probability)を求む.但し甲は乙の二倍の速さにて進むものとす.

2022.08.08記
(イ) の場合の数のそれぞれが等確率で起きないことに注意.ここでは進む方向が2つある場合は確率 \dfrac{1}{2} で進む方向を選び,進む方向が1つの場合は確率1で進む方向を選ぶものとする.

[解答]
(イ) {}_{9}\mbox{C}_4=126通り

(ロ) 進む方向が2つある場合は確率 \dfrac{1}{2} で進む方向を選び,進む方向が1つの場合は確率1で進む方向を選ぶものとする.

{\rm A}(0,0){\rm B}(5,4)のように座標を設定すると,出会う場所は
(2,4)(3,3)(4,2)(5,1)
であり,甲は6,乙は3進む.
(2,4) で出会う確率は\dfrac{1+6+15}{64}\times\dfrac{1}{8}=\dfrac{22}{2^9}
(3,3) で出会う確率は\dfrac{20}{64}\times\dfrac{3}{8}=\dfrac{60}{2^9}
(4,2) で出会う確率は\dfrac{15}{64}\times\dfrac{3}{8}=\dfrac{45}{2^9}
(5,1) で出会う確率は\dfrac{6+1}{64}\times\dfrac{1}{8}=\dfrac{7}{2^9}
であるから,求める確率は \dfrac{134}{2^9}=\dfrac{67}{256}

当時の解答で
甲が (2,4)(3,3)(4,2)(5,1) それぞれに辿りつく場合の数が 15,20,15,6 通りであるから,それぞれに辿りつく確率は \dfrac{15}{56},\dfrac{20}{56},\dfrac{15}{56},\dfrac{6}{56} であるとして,
\dfrac{15\times 1+20\times 3+15\times 3+6\times 1}{56\times 8}=\dfrac{9}{32}
としているものがあったが,

辿りつく場合の数が 15,20,15,6 通りであるから,それぞれに辿りつく確率は \dfrac{15}{56},\dfrac{20}{56},\dfrac{15}{56},\dfrac{6}{56} である

というのは少し乱暴だろう.