[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1943年(昭和18年)東京帝國大學理學部-數學[2]

[2] 同一正方形ニ内切スル楕圓ノ中ニテ圓ガ最大面積ヲ有スルコトヲ證明セヨ。

2020.03.29記
正方形の一辺の長さを2として良く、その4頂点が(\pm 1,\, \pm 1)(複号任意)であるとする。このとき楕円の y 切片を \pm h 0\lt h\leqq 1)とすると、楕円の面積は \pi h であり、これが最大となるのは  h=1、つまり楕円が円になるときである。

注) この解説を理解するにはカバリエリの原理が必要である。楕円の横軸の式を y=mx とすると、線型変換
 x\to x,\, y\to y-mx
によって、この楕円は楕円 x^2+\dfrac{y^2}{h^2}=1 にうつり(可逆な線型変換で楕円が楕円にうつることは既知とする)、面積は行列式が1より不変。よってもとの楕円の面積も \pi h となる。

2020.03.30記
楕円\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1の直交する接線の交点の軌跡が準円x^2+y^2=a^2+b^2 となることは有名である。
楕円の準円の求め方(解決編) - 球面倶楽部 零八式 mark II

このとき、楕円\dfrac{x^2}{\cos^2\theta}+\dfrac{y^2}{\sin^2\theta}=1の直交する接線の交点の軌跡がx^2+y^2=1 となる。ここで、
楕円の準円(ポンスレの閉形定理) - 球面倶楽部 零八式 mark II
でも述べたが、この直交する接線を含む長方形を考えると、楕円はその長方形に内接する。直交する接線をうまく選べば正方形にすることができる(長方形の縦と横の差を考え、90度回転すると縦横が入れかわるので、中間値の定理から縦と横が等しくなる場所がある)。

つまり、楕円\dfrac{x^2}{\cos^2\theta}+\dfrac{y^2}{\sin^2\theta}=1は、単位円に内接する一辺の長さが\sqrt{2}の正方形に内接する。

その面積 \pi \cos\theta\sin\theta=\dfrac{\pi}{2}\sin2\theta\theta=\dfrac{\pi}{4}で最大となるが、このとき\cos\theta=\sin\thetaにより、その楕円は円である。

2020.03.30記
一般に、原点対称な楕円は ax^2+2bxy+cy^2=1ac\neq 0)の形をしている。これが y=1 と接するとき、
 ax^2+2bx+c-1=0の判別式が0であることから、b^2-a(c-1)=0となる。
同様に、x=1にも接するとき、b^2-c(a-1)=0 となる。

よって、最初に考えた一辺の長さが2の正方形に内接する楕円についてa=c,\, b^2=a(a-1)(これからa\geqq 1)が成立するので、その楕円の方程式は
ax^2+2\sqrt{a(a-1)}xy+ay^2=1
となる。この楕円の面積は
斜めの楕円の面積 - 球面倶楽部 零八式 mark II
にもあるように、 \dfrac{\pi}{ac-b^2}=\dfrac{\pi}{a} となり、これが最大となるのは a が最小となる a=1 のとき。
このとき楕円の方程式はx^2+y^2=1となり、これは円。