[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1929年(昭和4年)東京帝國大學理學部-數學[1]

2022.09.01記

[1] 半徑1米ナル半球ヲ其ノ底面ニ平行ナル平面ニテ截リ其ノ體積ヲ二等分セントス,底面ト截面トノ距離ヲ粍ノ位マデ算出セヨ.

2022.09.06記
粍はmm(ミリメートル)のこと.つまり小数第3位まで求めよということ.

[解答]
2\displaystyle\int_0^x \pi (1-t^2)dt=\displaystyle\int_0^1 \pi (1-t^2)dt
から
 2\left(x-\dfrac{x^3}{3}\right)=\dfrac{2}{3}
つまり
f(x)=x^3-3x+1=00\lt x\lt 1
なる x を求めれば良い.

f'(x)\lt 00\lt x\lt 1),f(0)=1\gt 0f(1)=-1\lt 0 よりこのような x は唯一存在する.

(i) 根性で計算(通常はホーナー法、組立除法を用いるが形が単純なので)する.なお境目の計算だけ記載するが,実際はもう少し多くの計算をすることになるだろう.

f(x)=x(x^2-3)+1であるから,
f(0.3)=-0.3\times 2.91+1\gt 0
f(0.4)=-0.4\times 2.84+1\lt 0
より,x=0.3\cdots である.
f(0.34)=-0.34\times 2.8844+1=0.019304
f(0.35)=-0.35\times -2.8775+1=-0.007125
より,x=0.34\cdots である.
f(0.347)=-0.347\times 2.879591+1=0.000781923
f(0.348)=-0.348\times 2.878896+1=-0.001855808
より,x=0.347\cdots である.よって求める答えは 34cm7mm である.

(ii) ニュートン法で求める

f''(x)\gt 00\lt x\lt 1)よりニュートン法で求める.このとき,y=f(x)x=t における接線
y=3(t^2-1)(x-t)+t^3-3t+1
x軸の交点の x 座標は t+\dfrac{t^3-3t+1}{3(1-t^2)} であるから,
x_{n+1}=x_n+\dfrac{x_n^3-3x_n+1}{3(1-x_n^2)}x_0=0 に従って数列を定めると
x_1=\dfrac{1}{3}
x_2=\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{72}=\dfrac{25}{72}=0.347222\cdots
x_3=\dfrac{170999}{492372}=0.34729635316\cdots
となる.ここで
f(0.348)=-0.001855808\lt 0
だから,0.34729\lt x\lt 0.348 となり,よって求める答えは 34cm7mm である.

(iii) f(x)=x^3-3x+1=0 なる x の1つは x=2\sin 10^{\circ} であることは有名.

x=2\sin \theta-90^{\circ}\leqq \theta\leqq 90^{\circ}) とおくと
f(2\sin\theta)=2(4\sin^3\theta-3\sin\theta)+1=-2\sin 3\theta +1=0
から \sin 3\theta=\dfrac{1}{2} となるので \theta=-70^{\circ},10^{\circ},  50^{\circ} となるが,この中で 0\lt \sin\theta\lt 1 をみたすのは x=2\sin 10^{\circ} のみである.

\theta=\dfrac{\pi}{18} とおくと,\pi\lt 3.15 から \theta\lt 0.175=\dfrac{7}{40} となる.

Talyor の定理より 2\sin\theta=2\theta-\dfrac{\theta^3}{3}+\dfrac{2\cos c}{5!}\theta^5 なる c が存在するので |\theta|\lt \dfrac{7}{40} の範囲において 2\sin\theta2\theta-\dfrac{\theta^3}{3} で近似した誤差は \dfrac{2}{5!}\left(\dfrac{7}{40}\right)^5\lt \dfrac{50^2}{60\times 40^5}=\dfrac{1}{24576}\lt 0.00005 未満となる.

よって,\theta=\dfrac{\pi}{18}\mbox{≒}0.1745 の近似において x\mbox{≒}2\theta-\dfrac{\theta^3}{3}=0.3472\cdots となり,よって求める答えは 34cm7mm である.