[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2004年(平成16年)東京大学前期-数学(理科)[5]

2024.02.18記

[5] r を正の実数とする.xyz 空間内の原点 \mbox{O}(0,0,0) を中心とする半径 1 の球をA,点\mbox{P}(r,0,0) を中心とする半径 1 の球を B とする.球 A と球 B の和集合の体積を V とする.ただし,球 A と球 B の和集合とは,球 A または球 B の少なくとも一方に含まれる点全体よりなる立体のことである.

(1) Vr の関数として表し,そのグラフの概形をかけ.

(2) V=8 となるとき,r の値はいくらか.四捨五入して小数第 1 位まで求めよ.

注意:円周率\pi3.14\lt \pi\lt 3.15をみたす.

本問のテーマ
二分法(2021.01.31)
インド式計算(10a+5)^2=100a(a+1)+25(2021.01.31)

2021.01.31記
単調な連続関数で f(a)\gt 0f(b)\lt 0 のとき,次は f\Bigl(\dfrac{a+b}{2}\Bigr) を試す、というように区間を半分にすることを繰り返して解を追い詰める方法を二分法という.これを工夫して黄金比区間を分割する方法も提案されている.

なお,方程式の解といえばニュートン法も思い浮ぶだろうが,手計算だと面倒なことが多い.

[解答]
(1)(i) r\geqq 2 のときは2球に共通部分がないので V=\dfrac{8\pi}{3}

(ii) 0\lt r\lt 2 のときは
\dfrac{8\pi}{3}-\displaystyle 2\int_{r/2}^{1} \pi(1-x^2)dx=\dfrac{-r^3+12r+16}{12}

(図示略)

(2) C=-16+\dfrac{96}{\pi} とおくと,f(r)=r^3-12r+C=0 の解を求めれば良い.ここで
30.47…=\dfrac{96}{\pi} \lt \dfrac{96}{\pi}\lt \dfrac{96}{3.14}=30.57… より
14.47 \lt C=-16+\dfrac{96}{\pi}\lt 14.58 である.

f(r)0\lt r\lt 2 で単調減少であり,f(2)\lt 0 である.

f(1)=1-12+C\gt 3.47\gt 0 だから,解は 1\lt r\lt 2 をみたす.

f(1.5)=3.375-18+C\lt -0.045\lt  0 だから,解は 1\lt r\lt 1.5 をみたす.
二分法だと,次は1.25 を試すところであるが,f(1.5)\approx 0 なので,次は r=1.4 を試す.

f(1.4)=2.744-16.8+C=-14.056+C\gt 0.414\gt 0 だから,解は 1.4\lt r\lt 1.5 をみたす.

f(1.45)=3.048625-17.4+C\gt 3.04-17.4+C=0.11\gt 0 だから,解は 1.45\lt r\lt 1.5 をみたす.

よって,r の小数第2位を四捨五入すると 1.5

f(r)0\lt r\lt 2 で下に凸だから接線による評価 f(r)\geqq f'(1.5)(r-1.5)+f(1.5) を利用して f(1.45)\gt 0 を示すのが,大数の本解や鉄緑の別解にあるが,やっていることは本質的に  (1.5+\epsilon)^3\geqq 1.5^3+3\times 1.5\epsilon だから,接線の式を求めて代入する時間があれば、
1.45^2=2.102514\times 15=210 )から
1.45^3\gt 2.1\times 1.45=2.9+0.145=3.045 と評価するのが早い.

なお,1.5^3=\dfrac{27}{8}=3.375 も,\dfrac{3}{8}=0.375 は暗算レベルだから簡単.

微妙な工夫をしておく.(1) から f'(2)=0 となることから,f(r)=(r-2)^2(r+4)+(定数) となることに注意すると,計算量がかなり減らせる.

[うまい解答]
(2) D=32-\dfrac{96}{\pi} とおくと,f(r)=(2-r)^2(4+r)-D=0 の解を求めれば良い.ここで
30.47…=\dfrac{96}{\pi} \lt \dfrac{96}{\pi}\lt \dfrac{96}{3.14}=30.57… より
1.42\lt D \lt 1.53 である.

f(r)0\lt r\lt 2 で単調減少であり,f(2)\lt 0 である.

f(1)=5-D\gt 0 だから,解は 1\lt r\lt 2 をみたす.

f(1.5)=5.5÷4-D=1.375-D\lt  0 だから,解は 1\lt r\lt 1.5 をみたす.
二分法だと,次は1.25 を試すところであるが,f(1.5)\approx 0 なので,次は r=1.4 を試す.

f(1.4)=0.6^2\times 5.4-D=0.36\times 5.4 \gt 0.3\times 5.4 -D=1.62-D \gt 0 だから,解は 1.4\lt r\lt 1.5 をみたす.

f(1.45)=0.55^2\times 5.45=0.3025\times 5.45\gt 0.3\times 5.4-D \gt 0 だから,解は 1.45\lt r\lt 1.5 をみたす.

よって,r の小数第2位を四捨五入すると 1.5

ここで 55^2=3025 の暗算もインド式(笑