[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1948年(昭和23年)東京大学工学部-数学[4]

2020.04.03記

[4] 方程式  x^3+3x^2-9=0 は唯一の實根を有することを證明し,且つその値を小數第二位迄求めよ(第三位を四捨五入のこと).

本問のテーマ
Newton 法(2022.07.20)

2020.04.08記(「2022.07.20記」に新しいバージョンがあるのでそちらを参照すれば十分)
 f(x)=x^3+3x^2-9 とおくと、f'(x)=3x^2+6x=3x(x+2) となる。極大値 f(-2)=-5\lt 0、極小値 f(0)=-9 より、x\leqq 0 には実解はなく、 x\gt 0 で狭義単調増加だから、実根は唯一。

f(1)=-5,\,f(2)=11 により、実根は 1\lt x\lt 2 をみたす。
そこで  x=2 からニュートン法で求めることを考える.
y=f(x)x=a における接線の方程式の x 切片は  0=(3a^2+6a)(x-a)+a^3+3a^2-9 をみたすので、
 x=\dfrac{2a^3+3a^2+9}{3a^2+6a} を利用して逐次更新する。
つまり
a_1=1,\,a_{n+1}=\dfrac{2a_n^3+3a_n^2+9}{3a_n^2+6a_n}
によって解の近似値を更新する。a_2=\dfrac{14}{9}=1.55555 の時点で a_3 は求めたくない。

そこで,ホーナーの方法のような感じで追い詰めていく。

f(x)=x^2(x+3)-9 より、 f(1.5)=2.25\times 4.5 -9\gt 2\times 4.5-9=0 であり、
 f(1.4)=1.96\times 4.4 -9\lt 2\times 4.5 -9 = 0 であるから、1.4\lt x\lt 1.5 である。
f(1.41)=-0.232479‬\lt 0
f(1.42)=-0.087512‬\lt 0
f(1.43)=0.058907\gt 0
であるから、1.42\lt x\lt 1.43 である。
f(1.425)=-0.014484375‬\lt 0 であるから、 1.43\gt x\gt 1.425 となり、求める答は x=1.43 である。

1問に30分以上かけられるので、これぐらいの筆算はがんばってやろう。

2022.07.20記

Newton 法

区間[a,b]で2階微分可能な関数f(x)がこの区間f'(x)f''(x)が定符号であるとし, f(x)=0 なる実数 \alpha が存在するとする(条件から存在すれば唯一である).

このとき,g(x)=x-\dfrac{f(x)}{f'(x)} とおくと,
x\in[a,b] に対して g(x) を対応させることを繰り返すことにより,
x\alpha に収束する.

Newton 法は,方程式 f(x)=0 を1次方程式
f'(p)(x-p)+f(p)=0p\in[a,b]
で近似することであり,この近似により解の近似値 pp\mapsto g(p)g(p) に更新される.

[説明]f'(x)\gt 0f''(x)\gt 0 として良い(他の場合は x軸対称,y軸対称,原点対称することによってこの場合に帰着できる).このとき f(a)\lt 0\lt f(b) である.

x_0\in[a,b]x_{n+1}=g(x_n) によって数列 \{x_n\}帰納的に定める.

ここで f の単調性から f(x_k)=0x_k=\alpha が同値であり,これは x_k-x_{k+1}=\dfrac{f(x_k)}{f'(x_k)}=0 と同値であるから
x_k=\alphax_{k+1}=\alpha が同値」
であることに注意しておく.

(i) f(x_k)\gt 0 とすると,f'(x+k)\gt 0 から \dfrac{f(x_k)}{f'(x_k)}\gt 0 となるので x_{k+1}=g(x_k)\lt x_k である.また,f(x) が下に凸であることから,x=x_k における接線よりも y=f(x)の方が上部にあるので
f(x_{k+1})\geqq f'(x_k)(x_{k+1}-x_k)+f(x_k)=0
となるが,f(x) が単調増加であることから\alpha\leqq x_{k+1} となり,x_{k+1}\neq\alpha であるから
\alpha\lt x_{k+1} となる.よって帰納的に
x_0\gt x_1\gt\cdots \gt x_n \gt \cdots \gt \alpha
となる.

(ii) f(x_0)\lt 0 の場合は,f(x_1)\lt\alpha となり,(i)に帰着できる.

さて,
x_{k+1}-\alpha=x_k-\alpha+\dfrac{f(x_k)-f(\alpha)}{f'(x_k)}(∵f(\alpha)=0
=\dfrac{f(x_k)-\{f(\alpha)+f'(x_k)(x_k-\alpha)\}}{f'(x_k)}=\dfrac{f''(\beta)}{2f'(x_k)}(x_k-\alpha)^2
をみたす \beta\alphax_k の間に存在するので
|x_{k+1}-\alpha|\leqq \dfrac{\displaystyle\sup_{x\in[a,b]} f''(x)}{2\displaystyle\inf_{x\in[a,b]} f'(x)}(x_k-\alpha)^2
のように誤差評価ができる(\displaystyle\inf_{x\in[a,b]} f'(x)=\lim_{x\to a+0} f'(x)
|x_{k+1}-\alpha||x_k-\alpha|^2の定数倍で抑えられるので,Newton 法は2次収束するという.

[解答]
 f(x)=x^3+3x^2-9 とおくと、f'(x)=3x^2+6x=3x(x+2) となる。極大値 f(-2)=-5\lt 0、極小値 f(0)=-9 より、x\leqq 0 には実解はなく、 x\gt 0 で狭義単調増加だから、実根は唯一。

f(1)=-5,\,f(2)=11 により、実根は 1\lt x\lt 2 をみたす。
そこで  x=2 からニュートン法で求めることを考える.
y=f(x)x=a における接線の方程式の x 切片は  0=(3a^2+6a)(x-a)+a^3+3a^2-9 をみたすので、
 x=g(a)=\dfrac{2a^3+3a^2+9}{3a^2+6a} を利用して逐次更新する。
ここで,a の近傍の解を p とすると g(p)=p であるから
 x-p=g(a)-g(p)=g'(q)(qa,pの間)
=\dfrac{2a^3+3a^2+9}{3a^2+6a} を利用して逐次更新する。

g(1)=\dfrac{14}{9}=1.555\cdots
なので,\dfrac{3}{2}=1.5 を近似値とすると,
g(1.5)=\dfrac{27+27+36}{27+24}=\dfrac{10}{7}=1.4285\cdots
が成立する.

今,x\in[1,1.5] において,f'(x)\gt 0f''(x)=6x+6\gt 0(この区間で共に単調増加)であるから,f(x)=0 なるx\in[1,1.5]\alpha とすると,g(1.5)\lt 1.5 であるから,\alpha\lt g(1.5) であることがわかる.

ここで  f(1.4)=1.96\times 4.4 -9\lt 2\times 4.5 -9 = 0 であるから、1.4\lt \alpha\lt 1.5 である。
よって
g(1.5)-\alpha\lt \dfrac{f''(1.5)}{2f'(1.4)}(1.5-\alpha)^2\lt \dfrac{f''(1.5)}{2f'(1.4)}(1.5-1.4)^2=\dfrac{15}{28.56}\times 0.01=0.00525\cdots\lt 0.0053
となり,
1.4285-0.0053\lt\alpha \lt 1.4285
つまり
1.4232\lt\alpha \lt 1.4285
であることがわかるので,この結果を再度用いると
g(1.5)-\alpha\lt \dfrac{15}{28.56}\times (1.5-1.42)^2=\dfrac{6}{1785}=0.00336\cdots\lt 0.0034
となり,
1.4251\lt\alpha \lt 1.4285
となるので,\alpha を小数第3位で四捨五入すると 1.43 である.

試験場で電卓無しではほぼ絶望的であるが,数値計算の上では次のように解くこともできる.

[別解]
(途中から)

x\in[1,1.5]
g(1.5)-\alpha\lt \dfrac{f''(1.5)}{2f'(1)}(1.5-\alpha)^2=\dfrac{5}{6}(1.5-\alpha)^2
が成立するので,
g(1.5)-\alpha\lt \dfrac{f''(1.5)}{2f'(1)}(1.5-\alpha)^2=\dfrac{5}{6}(1.5-1)^2=\dfrac{5}{24}=0.208333\cdots
となり,1.2201\lt \alpha が成立する.

これから,x\in[1.220,1.5]
g(1.5)-\alpha\lt \dfrac{f''(1.5)}{2f'(1.220)}(1.5-\alpha)^2
となる.

よって
g(1.5)-\alpha\lt\dfrac{15}{23.5704}(1.5-1.22)^2=0.049893\cdots
から,1.3795\lt \alpha となるので,
x\in[1.379,1.5]
g(1.5)-\alpha\lt \dfrac{f''(1.5)}{2f'(1.379)}(1.5-\alpha)^2
となる.

よって
g(1.5)-\alpha\lt\dfrac{15}{27.957846}(1.5-1.379)^2=0.00785\cdots
から,1.4206\lt \alpha となるので,
x\in[1.420,1.5]
g(1.5)-\alpha\lt \dfrac{f''(1.5)}{2f'(1.420)}(1.5-\alpha)^2
となる.

よって
g(1.5)-\alpha\lt\dfrac{15}{29.1384}(1.5-1.420)^2=0.00329\cdots
から,1.42526\lt \alpha となるので,結局
1.42526\lt \alpha\lt 1.4285 となるので,\alpha を小数第3位で四捨五入すると 1.43 である.

なお,Newton 法が2次収束と収束が早いことと
g(1.4285714)=1.4259920\cdots
g(1.4259920)=1.4259887\cdots
から,\alpha=1.4259\cdots となるので \alpha を小数第3位で四捨五入すると 1.43 であることがわかるが,
1.425\leqq \alpha \lt 1.435
であることを数学的に述べていないので,これをこのまま答案とするのは不十分である.
電卓を使った究極的な答案は

[別解]
(後半のみ)

f(1.425)=-0.014484375\lt 0f(1.43)=0.058907\gt 0 より 1.425\lt\alpha \lt 1.43 であるから \alpha を小数第3位で四捨五入すると 1.43 である.