[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1939年(昭和14年)東京帝國大學工學部-數學[2]

2022.07.24記

[2] 直交軸xyに關し,次の方程式  x=a\sin\theta,y=ae^{-p}\sin(\theta+p) は如何なる圖形を表はすか.但しapは正の常數,\thetaは媒介變數とする.又その圖形の圍む面積はpの値により如何に變化するか.

2022.08.06記

[解答]
x=a\sin\theta
y=ae^{-p}\cos p (\sin\theta) +ae^{-p}\sin p(\cos\theta)
であるから,(x,y) の描く図形は XY 平面の円 X^2+Y^2=1(X,Y)=(\sin\theta,\cos\theta)) を線形変換
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}\begin{pmatrix} a & 0 \\ ae^{-p}\cos  p & ae^{-p}\sin  p \end{pmatrix}\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix}
によって変換したものであり,この行列の行列式a^2e^{-p}\sin p であるから,

(i) p\neq n\pin\in\mathbb{N})のとき,行列式が非零となり,楕円
(ii) p=n\pin\in\mathbb{N})のとき,行列式が0となり,線分

である.楕円の囲む面積は行列式の絶対値倍されるので, \pi a^2e^{-p}|\sin p|(線分のときは0) である.

ここで f(p)=\pi a^2e^{-p}|\sin p| とおくと p\neq n\pi のとき
f'(p)=\pi a^2e^{-p}\left| \sin\left(p+\dfrac{3\pi}{4}\right)\right|
であるから,p=\dfrac{\pi}{4}+n\pin\in\mathbb{N})のとき極大となり
p=n\pin\in\mathbb{N})のとき極小となる(線分となり面積0).

当時の雑誌の解答では,線形代数を駆使することは難しかったようで

p\pi ノ倍數ナルトキハ直線ヲ表ハシ,ソノ他ノ場合ニハ一ツノ自閉曲線ヲ表ハシ,…
となっている.それだけ線形代数の威力は凄まじい.

曲線で囲む面積も,当時は \int ydx に従って求めていたが,現在では \int (x'y-xy') d\theta を使うところであろうか.ただ,問題では \int ydx が使い易いように x=a\sin\theta と簡単に与えられている.