[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1940年(昭和15年)東京帝國大學農學部-數學[3]

2022.07.20記

[3] 楕圓ノ共軛徑ノ平方ノ和及ビ雙曲線ノ共軛徑ノ平方ノ差ハ一定ナルコトヲ證明セヨ.

本問のテーマ
楕円と双曲線の共役径

楕円の中心を通る弦(径)と平行な直線と,もとの楕円の2交点の中点の軌跡からなる楕円の弦を,その弦(径)の共役径という.

双曲線の中心を通る弦(径)と平行な直線と,もとの双曲線の共役双曲線の2交点の中点の軌跡からなる共役双曲線の弦を,その弦(径)の共役径という.ここで,共役双曲線とは,
\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1に対して
\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=-1の関係にある
双曲線のことである.

2022.07.24記

[解答]
(1) 楕円の場合

楕円 \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1y=mx+n が2点で交わるとき,2交点の x 座標は
(a^2m^2+b^2)x^2+2a^2mnx+a^2n^2-a^2b^2=0 の2解であるから,2交点の中点の x 座標は -\dfrac{a^2mn}{a^2m^2+n^2} であり,よって y 座標は
\dfrac{b^2n}{a^2m^2+n^2} となる.よって中点の軌跡は
y=-\dfrac{b^2}{a^2m} x となる.つまり楕円 \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 の互いに共役な径の傾きは m-\dfrac{b^2}{a^2m} となることから

「径が共役\Leftrightarrow傾きの積が -\dfrac{b^2}{a^2}

であることがわかる.よって楕円の共役径の端点が (x_1,y_1)(x_2,y_2) であるとするとき,(x_2,y_2)y=-\dfrac{b^2x_1}{a^2y_1}x と楕円の交点となる.

ここで x_2=-\lambda a^2y_1y_2=\lambda b^2x_1 とおくと,
\lambda^2(a^2y_1^2+b^2x_1^2)=a^2b^2\lambda^2=1
であるから \lambda=\dfrac{\pm 1}{ab} となり,
(x_2,y_2)=\left(\mp\dfrac{a}{b}y_1,\pm\dfrac{b}{a}x_1\right)
となる.

このとき,
4(x_1^2+y_1^2)+4(x_2^2+y_2^2)
=4\left(1+\dfrac{b^2}{a^2}\right)x_1^2+4\left(1+\dfrac{a^2}{b^2}\right)y_1^2=4(a^2+b^2)\left(\dfrac{x_1^2}{a^2}+\dfrac{y_1^2}{b^2}\right)=4(a^2+b^2)
で一定である.

(2) 双曲線の場合

双曲線 \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1y=mx+n が2点で交わるとき,2交点の x 座標は
(-a^2m^2+b^2)x^2-2a^2mnx-a^2n^2-a^2b^2=0 の2解であるから,2交点の中点の x 座標は -\dfrac{a^2mn}{a^2m^2-n^2} であり,よって y 座標は
\dfrac{-b^2n}{a^2m^2-n^2} となる.よって中点の軌跡は
y=\dfrac{b^2}{a^2m} x となる.つまり双曲線 \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1 の互いに共役な径の傾きは m\dfrac{b^2}{a^2m} となることから

「径が共役\Leftrightarrow傾きの積が \dfrac{b^2}{a^2}

であることがわかる.よって双曲線 \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=-1 のある径の端点が (x_1,y_1)であり,その共役径の端点が (x_2,y_2) であるとするとき,(x_2,y_2)y=\dfrac{b^2x_1}{a^2y_1}x と双曲線 \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=-1 の交点となる.

ここで x_2=\lambda a^2y_1y_2=\lambda b^2x_1 とおくと,
\lambda^2(a^2y_1^2-b^2x_1^2)=a^2b^2\lambda^2=-1
であるから \lambda=\dfrac{\pm 1}{ab} となり,
(x_2,y_2)=\left(\pm\dfrac{a}{b}y_1,\pm\dfrac{b}{a}x_1\right)
となる.

このとき,
4(x_1^2+y_1^2)-4(x_2^2+y_2^2)
=4\left(1-\dfrac{b^2}{a^2}\right)x_1^2+4\left(1-\dfrac{a^2}{b^2}\right)y_1^2=4(a^2-b^2)\left(\dfrac{x_1^2}{a^2}-\dfrac{y_1^2}{b^2}\right)=4(a^2-b^2)
で一定である.

楕円は線形変換で単位円に,双曲線は線形変換で xy=1 に移すことができ,平行であることと,中点であることは保存されるので,共役径である組は共役径である組にうつることがわかる.

[うまい解答]
(1) 楕円の場合

楕円を \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 としたとき,y 軸方向に \dfrac{a}{b} 倍拡大すると円 x^2+y^2=a^2 になる.この拡大変換において,平行線は平行線に,中点は中点に移るので,共役径も共役径に移る.

円における共役径は互いに直交する直径であり,それらを (a\cos\theta,a\sin\theta) を通る直径と(-a\sin\theta,a\cos\theta) を通る直径とすると,
楕円の共役径は (a\cos\theta,b\sin\theta) を通る径と(-a\sin\theta,b\cos\theta) を通る径であるから,その長さの平方の和は
4\left(a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta\right)+4\left(a^2\sin^2\theta+b^2\cos^2\theta\right)=4(a^2+b^2)
となり,\theta によらず一定であるから題意は示された.

(2) 双曲線の場合

双曲線を \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1 としたとき,y 軸方向に \dfrac{a}{b} 倍拡大すると直角双曲線 x^2-y^2=a^2 になり,さらに原点中心に \dfrac{\pi}{4} 回転して原点中心に \dfrac{\sqrt{2}}{a} 倍拡大するとxy=1 に移る.この変換において,平行線は平行線に,中点は中点に移るので,共役径も共役径に移る.

双曲線 xy=1 上の点 (k,1/k) を通る径とその共役径を考える.これらを X=\dfrac{x}{k}Y=ky という線形変換を行うと,xy=1 は自分自身にうつり,片方の径が Y=X となるので,もう片方の径は Y=-X となる.

よって (k,1/k) を通る径の共役径は xy=-1\left(\mp\dfrac{1}{k},\pm k\right) を通る径であり,これらは直交している.よって x^2-y^2=\pm a^2 の共役径も直交している.つまりその端点の組は
(a\cosh\theta,a\sinh\theta)(-a\sinh\theta,a\cosh\theta)
であり,よって双曲線 \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=\pm 1 の共役径の端点の組は
(a\cosh\theta,b\sinh\theta)(-a\sinh\theta,b\cosh\theta)
となる.よって共役径の長さの差は
4(a^2\cosh^2\theta+b^2\sinh^2\theta)-4(a^2\sinh^2\theta+b^2\cosh^2\theta)=4a^2(\cosh^2\theta-\sinh^2\theta)-4b^2(\cosh^2\theta-\sinh^2\theta)=4(a^2-b^2)
となり,\theta によらず一定であるから題意は示された.

双曲線関数は本質的ではなく,共役径の端点の組は
(a\sec\theta,b\tan\theta)(-a\tan\theta,b\sec\theta)
でも
\left(\dfrac{a}{2}\left(t+\dfrac{1}{t}\right),\dfrac{b}{2}\left(t-\dfrac{1}{t}\right)\right)\left(\dfrac{a}{2}\left(\dfrac{1}{t}-t\right),\dfrac{b}{2}\left(t+\dfrac{1}{t}\right)\right)
でも構わない.