[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1956年(昭和31年)東京大学-数学(幾何)[1]

2022.02.11記

[1] 一平面上に定円 \rm O と,その中心 \rm O とは異なる定点 \rm A がある.円 \rm O の任意の直径の両端と点 \rm A とを頂点とする三角形の外心の軌跡を求めよ.

2022.02.11記

[解答]
\rm O の半径を r とし,任意の直径の両端を \rm B,C とする.また \triangle\rm ABC の外接円を {\rm O}'
とする。

(i) \rm A が 円 \rm O の周上にあるとき:
{\rm O}' は必ず {\rm O} に一致するので,外心の軌跡は点 \rm O となる.

(ii) \rm A が 円 \rm O の周上にないとき:
\rm OA と円 {\rm O}'\rm A とは異なる交点を \rm D とすると,方羃の定理から
 {\rm OD}=\dfrac{{\rm OB}\cdot{\rm OC}}{{\rm OA}}=\dfrac{r^2}{{\rm OA}}
は直径の選び方によらず一定だから,\rm D は定点である.

ここで外心は \rm AD の垂直2等分線上にあるが, \rm A,D は互いに円 \rm O に関して反転した後に原点対称させた関係にあるので,一方が内部で他方が外部となることに注意すると, \rm AD の垂直2等分線上の任意の点 \rm X に対して,\rm X を中心として \rm A を通る円は \rm D も通るので,{\rm O}{\rm O}' は必ず相異なる2点で交わることとなる.この2点のうち片方を \rm Y とおき,円 \rm O\rm Y を端点とする直径の他端を Z とするとき,\rm A,Y,Z を通る円は \rm D を通るので円 {\rm O}' に一致することから,Z も円 {\rm O}' 上にあることになり,よって {\rm O}{\rm O}' の2交点は直径の両端 \rm Y,Z となる.

よって,求める軌跡は \rm AD の垂直2等分線全体である.

この点 \rm D は,

(1) \rm O を通り \rm OA に垂直な直線と円の交点を \rm P とする.
(2) \rm P を通り \rm OP に垂直な直線と \rm OA の交点が求める点 \rm D である.
(3) \rm AD の垂直2等分線が求める軌跡である.

によって作図をすることができる。

座標設定をすると次のようになる.

[別解]
\rm O(0,0),円{\rm O}:x^2+y^2=r^2r\gt 0),点 {\rm A}(a,0)a\neq 0)とする.

円の直径を {\rm B}(r\cos\theta,r\sin\theta){\rm C}(-r\cos\theta,-r\sin\theta)\sin\theta\neq 0) とすると,
\rm BC の垂直2等分線は
x\cos\theta+y\sin\theta=0
であり,\rm AB の垂直2等分線は
(x-a)^2+y^2=(x-r\cos\theta)^2+(y-r\sin\theta)^2
つまり
2(r\cos\theta-a)x+2ry\sin\theta=r^2-a^2
となる.よって外心の座標は
\left(\dfrac{a^2-r^2}{2a},\dfrac{(r^2-a^2)\cos\theta}{2a\sin\theta}\right)となる.

よって,\dfrac{\cos\theta}{\sin\theta} が任意の実数をとることに注意すると,

(i) a=\pm r のとき,1点 \rm O

(ii) a=\pm r のとき,直線 x=\dfrac{a^2-r^2}{2a} 全体

となる.

a=\pm r のときの場合分けは忘れてしまいがちなので注意しよう(減点量は少ないと思うが)。

次に束の考え方を使ってみよう.

[別解]
\rm O(0,0),円{\rm O}:x^2+y^2=r^2r\gt 0),点 {\rm A}(a,0)a\neq 0)とする.


円の直径を {\rm B}(r\cos\theta,r\sin\theta){\rm C}(-r\cos\theta,-r\sin\theta)\sin\theta\neq 0) とすると,この2点を通る円は
 x^2+y^2-r^2+k\{(\sin\theta) x- (\cos\theta) y\}=0
の形をしており,これが \rm A を通ることから
 k=\dfrac{r^2-a^2}{a\sin\theta}
をみたす.よって円の方程式は
 x^2+y^2-r^2+\dfrac{r^2-a^2}{a\sin\theta}\{(\sin\theta) x- (\cos\theta) y\}
 =x^2+y^2-\dfrac{a^2-r^2}{a}x-\dfrac{(r^2-a^2)\cos\theta}{a\sin\theta}-r^2=0
となり,この中心の座標は
\left(\dfrac{a^2-r^2}{2a},\dfrac{(r^2-a^2)\cos\theta}{2a\sin\theta}\right)となり,これが求める外心である.

よって,\dfrac{\cos\theta}{\sin\theta} が任意の実数をとることに注意すると,

(i) a=\pm r のとき,1点 \rm O

(ii) a=\pm r のとき,直線 x=\dfrac{a^2-r^2}{2a} 全体

となる.