[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1942年(昭和17年)東京帝國大學(秋入学)農學部-數學[1]

2020.05.13記

[1]  \Bigl(\dfrac{2}{1}\Bigr)^2
\gt \Bigl(\dfrac{3}{2}\Bigr)^3
\gt\Bigl(\dfrac{4}{3}\Bigr)^4
\gt\cdots\gt \Bigl(\dfrac{n+1}{n}\Bigr)^{n+1}ニシテ且\displaystyle\lim_{n\to\infty}\Bigl(\dfrac{n+1}{n}\Bigr)^{n+1}=e
ナルコトヲ證セヨ.

2020.05.13記
前半をまず示す。これは有名な解法があって、

[解答]
n\geqq 2のとき、

11 個と、 \dfrac{n-1}{n}n 個の n+1 個の正数についてAM-GM不等式を用いると、等号成立条件をみたさないので、 \dfrac{n}{n+1}\gt \Bigl(\dfrac{n-1}{n}\Bigr)^{\frac{n}{n+1}} が成立する。よって、 \Bigl(\dfrac{n}{n-1}\Bigr)^n>\Bigl(\dfrac{n+1}{n}\Bigr)^{n+1} が、n\geqq 2 で成立する。

後半は、eの定義が何かによって証明が違ってくるのでどう答えて良いか難しいが、eの定義を\displaystyle\lim_{n\to\infty}\Bigl(1+\dfrac{1}{n}\Bigr)^{n}としておく。

a_n=\Bigl(1+\dfrac{1}{n}\Bigr)^{n}b_n=\Bigl(1+\dfrac{1}{n}\Bigr)^{n+1} とおくと、a_n \to e (n\to\infty) であり、\dfrac{b_n}{a_n}=1+\dfrac{1}{n} \to 1 (n\to\infty) であるから、\displaystyle\lim_{n\to\infty} b_n =\displaystyle\lim_{n\to\infty} a_n =e となる。

ただ、この証明だと、前半が誘導にも何にもなっていないので、次のように説明しておく。


前半部から、b_n=\Bigl(1+\dfrac{1}{n}\Bigr)^{n+1} が単調減少な数列であることがわかる。

また、a_n=\Bigl(1+\dfrac{1}{n}\Bigr)^{n} とおくと、
11 個と、 \dfrac{n+1}{n}n 個の n+1 個の正数についてAM-GM不等式を用いると、等号成立条件をみたさないので、 \dfrac{n+2}{n+1}\gt \Bigl(\dfrac{n+1}{n}\Bigr)^{\frac{n}{n+1}} が成立する。よって、 a_{n+1}\gt a_n が、n\geqq 1 で成立し、a_nは単調増加であることがわかる。

a_nが単調増加列、b_nが単調減少列であり、\dfrac{b_n}{a_n}=1+\dfrac{1}{n}\gt 1 から a_n\gt b_n である。よって a_n は上に有界b_n は下に有界な単調列となるので、a_n は上限、b_n は下限に収束する。

a_n の上界の1つを c とすると  |b_n - a_n| = \dfrac{1}{n} c \to 0 (n\to\infty) となるので、a_n の上限と b_n の下限は等しく、
\displaystyle \lim_{n\to\infty} b_n =\displaystyle\lim_{n\to\infty} a_n が成り立つ(閉区間  I_n=[a_n,\,b_n] について区間縮小法の原理)。