[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2022年(令和4年)大阪大学-数学(理系)[4]

2022.03.01記

[4] f(x)=\log(x+1)+1 とする.以下の問いに答えよ.

(1) 方程式 f(x)=x は,x\gt 0 の範囲でただ 1 つの解をもつことを示せ.

(2) (1) の解を \alpha とする.実数 x0\lt x\lt \alpha を満たすならば,次の不等式が成り立つことを示せ.
0\lt\dfrac{\alpha-f(x)}{\alpha-x}\lt f'(x)

(3) 数列 \{x_n\}
x_1=1x_{n+1}=f(x_n)
n=1,2,3,\cdots\cdots
で定める.このとき,すべての自然数 n に対して,
\alpha-x_{n+1}\lt\dfrac{1}{2}(\alpha-x_n)
が成り立つことを示せ。

(4) (3)の数列 \{x_n\} について,\displaystyle\lim_{n\to\infty} x_n=\alpha を示せ。

2022.03.01記
今年の阪大理系のセットは、予備校のテキストのような問題ばかりだな。

なお,2\lt e(\lt 3) は既知としておく.

[解答]

(1) g(x)=f(x)-x とおく.

g'(x)=-\dfrac{x}{x+1}x\gt 0 で負だから g(x) は単調減少であるから, x\gt 0 における g(x)=0 の解は存在すれば唯一である.

g(x)=f(x)-x=\log\dfrac{x+1}{e^{x-1}} であるから,g(0)=\log e=1 \gt 0g(3)=\log \dfrac{4}{e^2}\lt 0(∵e\gt 2)となり中間値の定理から x\gt 0 における g(x)=0 の解は確かに存在する.

よって x\gt 0 における g(x)=0 の解は唯一存在する.

(2) f(\alpha)=\alpha であるから,平均値の定理より,
\dfrac{\alpha-f(x)}{\alpha-x}=\dfrac{f(\alpha)-f(x)}{\alpha-x}=f'(c)
なる cx\alpha の間に存在する.

x\gt 0f'(x)=\dfrac{1}{x+1}\gt 0 より f(x) は正の範囲で単調減少なので,0\lt f'(\alpha)\lt f'(c)\lt f'(x) となり,題意は成立する.

(3) (2) と x_{n+1}=f(x_n) より 0\lt \dfrac{\alpha-x_{n+1}}{\alpha-x_n}\lt f'(x_n)=\dfrac{1}{x_n+1}\cdots① が成立するので,1\leqq x_n であれば 0\lt \dfrac{\alpha-x_{n+1}}{\alpha-x_n}\lt f'(x_n)=\dfrac{1}{x_n+1}\leqq \dfrac{1}{2} となり題意が証明される.

ここで,0\lt x_n\lt \alpha であれば①から
0\lt \dfrac{\alpha-x_{n+1}}{\alpha-x_n}\lt f'(x_n)=\dfrac{1}{x_n+1}\lt \dfrac{1}{0+1}=1
となり,0\lt \alpha-x_{n+1} \lt \alpha-x_n
から x_n\lt x_{n+1}\lt \alpha が成立するが,n=1 のときに

0\lt x_1=1\lt \alpha
g(x) が単調減少で g(1)=\log 2 +1 =\log 2e \gt 0=g(\alpha)(∵2e\gt 1))

となるので,帰納的に1=x_1\lt x_2\lt \cdots が成立するので,すべての自然数 n に対して
0\lt \dfrac{\alpha-x_{n+1}}{\alpha-x_n}\lt f'(x_n)=\dfrac{1}{x_n+1}\lt \dfrac{1}{x_1+1}=\dfrac{1}{2}
が成立する.

(4) (3)より帰納的に 0\lt|\alpha-x_n|\lt \dfrac{1}{2^{n-1}}|\alpha-x_1| が成立し,よって \displaystyle\lim_{n\to\infty} \dfrac{1}{2^{n-1}}=0 と,はさみうちの原理から \displaystyle\lim_{n\to\infty} |x_n-\alpha|=0 が成立し,\displaystyle\lim_{n\to\infty} x_n=\alpha が成立する.

(1) で,やがて g(x)\lt 0 となることは,g(e^2-1)=\log e^2+1-(e^2-1)=4-e^2\lt 0 を用いても良い.

\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{x}{e^x}=0 を利用する場合は,e^t-t \gt 0(t\gt 0)を左辺の微分が正となることから証明し,これから e^{x}=(e^{x/2})^2\gt \dfrac{x^2}{4} を導いて
\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{x}{e^x} \lt \displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{4}{x}=0
と証明してから用いれば良い.