[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2013年(平成25年)東京大学前期-数学(理科)[5]

2020.10.01記
n 進数.

問題文ではxは正の実数とあるが,それは(1)の不等式の表現が簡単になるためである.
(1)の不等式は,(2)においてx が十分大きければ大丈夫という意味しかない.

そこで以下の考察では x自然数とする.このとき,
x 進法で考えると(その場合,各桁を「|」で区切るとする)


A=(x+y-1)(x+y)(x+y+1)=|1|3y|3y^2-1|y^3-y|_{(x)} とする.

(1') 十分大きな x に対して、
 |1|3y|0|0|_{(x)} \lt |1|3y|3y^2-1|y^3-y|_{(x)} \leqq |1|3y|x-1|x-1|_{(x)}
(下2桁が繰り上がってx^2 の位に影響を及ぼさない)が成立すること示せ((左辺)\lt(中辺)はほぼ明らかだが).

(2') 10進法で表したとき,1が連続して99回現れるところがあるような A が存在することを示せ.

となる.

(1') x\gt \max\{3y^2,y^3-y\} であれば成立する.
もちろん正確に評価しようとすると (3y^2-1)x+(y^3-y)\lt x^2 を解くことになり,(1)と同値になる.

(2') x を(1')の範囲とすると左辺と右辺では上から2桁目が3yで等しいので,3yに1が99桁並べば良い.安直には 3y=\dfrac{10^{99}-1}{9}(1を99桁並べた数)とすれば良く,つまり y=\dfrac{10^{99}-1}{27}(037を33回繰り返して並べた数)とすれば良い.その y に対して(1')をみたす10の羃 x=10^n を選べば題意が成立する.

[解答]
(1) 中辺は (x+y)^3-(x+y) であり,
y自然数であることから 3y^2x\gt x(∵x\gt 0),y^3\gt y であるから,
 x^3+3yx^2 =(x+y)^3-3y^2x-y^3\lt (x+y)^3-x-y となり,(左辺)\lt(中辺) は任意の正の実数 x に対して成立する.

(右辺)-(中辺)=x^2-(3y^2-1)x-(y^3-y)x=0 で負または0であるから,
求めるxの範囲は,この2次式を0とおいた大きい解以上となる.

よってx\gt\dfrac{3y^2-1+\sqrt{(3y^2-1)^2+4(y^3-y)}}{2} となる.

(2) 3y=\dfrac{10^{99}-1}{9}(1を99桁並べた数),つまり y=\dfrac{10^{99}-1}{27}(037を33回繰り返して並べた数)とし,x をこの y に対して (1)をみたす 10 の羃 x=10^n とする.

このとき,(1)の左辺,右辺とも上から 1が1個,0が n-99個,1が99個 並ぶ数となるので,中辺である A も上から 1が1個,0が n-99個,1が99個 並ぶ数となり,題意をみたす.

なお,東京出版の10年の軌跡には誘導の乗らずに(2)を証明する方法があった.同様な解法が河合出版の72年にもあった.
それを改良したものを載せておく.どちらの解法でも触れられていないが,結局は
A(n)=n(n+1)(n+2)\approx (n+1)^3 だから,A が十分大きな数の場合,n\approx \sqrt[3]{A(n)}-1 としてやれば良いということ.

[大人の解答](パクリ)

A(n)=n(n+1)(n+2) とおくと A(n)からA(n+1)へ変化すると,\dfrac{3}{n}の割合で増加する.

n=10^k のとき,A(10^k)=|1|3|2|0|_{(10^k)}であるから,10進法で3k+1 桁の数で上 k 桁は「1\underbrace{0…0}_{k-1桁}」である(上からk+1桁目が3).

これより大きい数だと増加率は\dfrac{3}{10^k}\lt \dfrac{1}{10^{k-1}}以下であるから上k桁は変化しないか 1増加するかのどちらかである.だから n を増やすとき,上k桁は10^{k-1}から自然数を飛び越すことなく順番に値をとり,やがて 3k+2 桁になるが,その手前で上k桁は10^{k}-1=\underbrace{99…9}_{k桁} となるので,上k桁は 1\underbrace{0…0}_{k-1桁} から \underbrace{99…9}_{k桁} までの全ての値をとりうる.

よって,k=99 とおくことにより,上99桁に1が並ぶような298桁の数が存在する.

ちなみに、n=[\sqrt[3]{10}\times 10^k-1] のとき,上k桁に9が並ぶ 3k+1 桁の数であり,
n=[\sqrt[3]{10}\times 10^k] のとき,3k+2 桁の数となる.

\sqrt[3]{10}=2.1544\cdots であり,
A(20)=9240
A(214)=9938160
A(2153)=9993946110,…

同じようにすると,\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}=1.035744...を利用して,この近辺で上k桁に1が並ぶ 3k+1 桁の数が得られる.

[大人の解答?]

例えば,[x]x 以下の最大の整数として,
A=\Bigl[\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}\times 10^{99}\Bigl]\times \Bigl(\Bigl[\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}\times 10^{99}\Bigl]+1\Bigr)\times \Bigl(\Bigl[\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}\times 10^{99}\Bigl]+2\Bigr)
とすると,この上99桁は1である.

[証明] A(t)=t(t+1)(t+2)=(t+1)^3-(t+1) とおくと,これは t\gt 0 で単調増加であり,
t=\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}\times 10^{99} とおくと,これはは無理数であるから,
A\Bigl(\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}\times 10^{99}-1\Bigr)\lt A\lt A\Bigl(\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}\times 10^{99}\Bigr)=A\Bigl(\sqrt[3]{\dfrac{10}{9}}\times 10^{99}-1\Bigr)\times\dfrac{t+3}{t}
つまり
 \dfrac{10^{298}}{9}-t \lt A \lt \Bigl(\dfrac{10^{298}}{9}-t\Bigr)\times\dfrac{t+3}{t} =\dfrac{10^{298}}{9}-t+\dfrac{10^{199}}{\sqrt[3]{30}}-3\lt \dfrac{10^{298}}{9}+\dfrac{10^{199}}{\sqrt[3]{30}}
が成立する.

\dfrac{10}{9}\gt \sqrt[3]{\dfrac{10}{9}} により  t\lt \dfrac{10^{100}}{9} であり,
\sqrt[3]{30}>3 であるから,
 \dfrac{10^{298}}{9}-\dfrac{10^{100}}{9} \lt A \lt \dfrac{10^{298}}{9}+\dfrac{10^{199}}{3}
が成立する.つまり
 \underbrace{11\cdots 1}_{198桁}\underbrace{00\cdots 0}_{100桁} \lt A \lt \underbrace{11\cdots 1}_{99桁}\underbrace{44\cdots 4}_{199桁}+\dfrac{4}{9}
となるので,A の上99桁は1である.

同じように上9桁に123456789が並ぶ28桁の数は
[ \sqrt[3]{1.23456789}\times 10^9]=1072765979.64
であるから,これを利用して
1072765979\times 1072765980\times 1072765981 = 1,234,567,891,239,138,915,431,106,400

同じように上10桁に1234567890が並ぶ31桁の数は
[ \sqrt[3]{1.234567890}\times 10^{10}]=10727659796.4
であるから,これを利用して
10727659796\times 10727659797\times 10727659798 = 1,234,567,890,203,394,775,177,286,794,776
が得られる.