[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1971年(昭和46年)東京大学-数学(理科)[4]

[4] x の整式
 f_n(x)=1+\dfrac{x}{1 \, !}+\dfrac{x^2}{2 \, !}+\cdots+\dfrac{x^n}{n \, !}n=1,2,\cdots
について
 f_n ' (x)=f_{n-1}(x)n=2,3,\cdots
が成り立つことを証明せよ.

方程式 f_n(x)=0 は,n が奇数ならばただ1つの実根をもち,n が偶数ならば実根をもたないことを数学的帰納法をもちいて証明せよ.

2021.10.08記

 \exp xマクローリン展開

[解答]

 f'_n(x)=0+\dfrac{1}{1 \, !}+\dfrac{2x}{2 \, !}+\cdots+\dfrac{nx^{n-1}}{n \, !}
 =1+\dfrac{x}{1 \, !}+\cdots+\dfrac{x^{n-1}}{(n-1) \, !}=f_{n-1}(x)
である.

方程式 f_n(x)=0 は,n が奇数ならばただ1つの実根をもち,n が偶数ならば実根をもたないことを数学的帰納法をもちいて証明する.

n=1 のとき f_1(x)=1+x はただ1つの実根をもつので題意が成立する.
n=2 のとき f_1(x)=1+x+\dfrac{x^2}{2}=\dfrac{1}{2}(x+1)^2+\dfrac{1}{2} は実根をもたないので題意が成立する.

n=2k-1,2k で題意が成立すると仮定する.

n=2k+1 のとき,f'_{2k+1}(x)=f_{2k}(x) は仮定より実根をもたないので定符号であり,\displaystyle\lim_{x\to\infty}f_{2k}(x)=+\infty だから常に正である.つまり f_{2k+1} は単調増加である.
ここで
\displaystyle\lim_{x\to-\infty}f_{2k+1}(x)=-\infty\displaystyle\lim_{x\to+\infty}f_{2k+1}(x)=+\inftyであるから,中間値の定理により f_{2k+1}(x)=0 となる実数は唯一である.

n=2k+2 のとき,f'_{2k+2}(x)=f_{2k+1}(x) は仮定より実根がただ1つであり,それを\alpha とおくと,f_{2k+2}(x)=f'_{2k+2}(x)+\dfrac{x^{2k+2}}{(2k+2)\, !} だから
f_{2k+2}(\alpha)=\dfrac{\alpha^{2k+2}}{(2k+2)\, !}>0 をみたす.

よって増減表は

x -\infty \alpha \infty
f'_{2k+2}(x) -\infty - 0 + \infty
f_{2k+2}(x) -\infty \searrow \nearrow \infty

となるので, f_{2k+2}(x)=0 は実根をもたない.

つまり,n=2k+1,2k+2 のときも題意は成立する.

以上からすべての自然数 n について題意は成立する.