[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2010年(平成22年)東京大学後期-総合科目II[1]B

[1] 自然科学などに数学的方法を適用しようとするとき,しばしば直接に自然現象を扱うのではなく,近似した量を取り扱うことが必要になる.また,方程式の解を直接求めるのが難しいときには,解の形を予想して解いてみる,発見的方法が重要になる.

B
図1のように,ひもで結ばれた点 {\rm P}_k(k=\cdots,-1,0,1\cdots) が振動する様子を考察する.時間のパラメータを t として,それぞれの点を xy 平面に図示し,時刻 t における点 {\rm P}_k の座標が
(k,f_k(t))(k=\cdots,-1,0,1\cdots)
で与えられるとしよう.ここで,ある自然数 N に対して,すべての k について
f_k(t)=f_{k+N}(t)……(1)
が成り立つと仮定する.

このとき,g_k(t)=f_k(t)-f_{k-1}(t) とおくと,f_k(t)g_k(t) はある正の定数 M について,近似的に
\dfrac{d^2}{dt^2}f_k(t)=M(g_{k+1}(t)-g_k(t))……(2)
をみたす.

ここで,
f_k(t)=h(t)\cos(\alpha k)
とおいて,f_k(t) が条件(1),(2)をみたすように h(t)\alpha を求めることを考える.ただし,h(t)k にはよらない t の関数であり,つねに値 0 をとる定数関数ではないとする.

図1(略)

(B-1) 条件(1)がみたされるような \alpha の値をすべて求め,N を用いて表せ.ただし,0\leqq \alpha\lt 2\pi とする.

(B-2) f_k(t) が式(2)をみたすとき,
\dfrac{d^2}{dt^2}h(t)=-4M\Bigl(\sin\dfrac{\alpha}{2}\Bigr)^2h(t)……(3)
が成り立つことを示せ.

(B-3) h(t)=\cos(\beta t) とおき,これが式(3)をみたすとき,定数 \betaM\alpha を用いて表せ.また,h(t) の周期が最も短くなるような \alpha の値を N を用いて表せ.

2021.02.14記
連成振動

[解答]

(B-1) h(t)\cos(\alpha k)=h(t)\cos(\alpha k+\alpha N) が任意の整数 k について成立するような N が存在する条件を考える.

h(t)\not\equiv 0 であるから,\cos(\alpha k)=\cos(\alpha k+\alpha N) となるので,\alpha N2\pi の整数倍,つまり \alpha=\dfrac{2\pi m}{N}(m=0,\ldots,N-1)

(B-2) (2)より
\cos(\alpha k)\dfrac{d^2}{dt^2}h(t)
=M(f_{k+1}(t)-2f_k(t)+f_{-1})
=M(\cos(\alpha k+\alpha)-2\cos(\alpha k)+\cos(\alpha k-\alpha))h(t)
=2M\cos(\alpha k)(\cos\alpha -1)h(t)
=-4M\cos(\alpha k)\Bigl(\sin\dfrac{\alpha}{2}\Bigr)^2h(t)
となり,
\dfrac{d^2}{dt^2}h(t)=-4M\Bigl(\sin\dfrac{\alpha}{2}\Bigr)^2h(t)

(B-3) (B-2)より \beta=\pm 2\sqrt{M}\sin\dfrac{\alpha}{2} であり,周期が最短のときは |\beta| が最大となるので
\Bigl|\sin\dfrac{\alpha}{2}\Bigr|=\Bigl|\sin\dfrac{\pi m}{N}\Bigr|
が最大になるとき.

(i) N が偶数のとき,m=\dfrac{N}{2} のときで \alpha=\pi

(ii) N が奇数のとき,m=\dfrac{N\pm 1}{2} のときで \alpha=\pi\pm\dfrac{\pi}{N}