[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1965年(昭和40年)東京大学-数学(文科)[5]

2020.09.28記

[5] 右の図のように,一平面上に半径の長さ1の円\rm Oと一辺の長さ4の正三角形\rm ABCがある。点\rm Pは円内の任意の点を動き,点\rm Qは正三角形の周上を動くとする。このとき線分\rm PQ の中点\rm R の動きうる範囲を図示し,その面積を求めよ。

2020.09.28記
半径が\dfrac{1}{2}の円板(円の周または内部)が1辺の長さが2の正三角形の周上を動くときの通過範囲の面積。中に隙間ができることを忘れなければ簡単。

1辺の長さが2の正三角形の面積\sqrt{3} と,その周りの部分3+\dfrac{\pi}{4} を足して、刳り貫く部分の正三角形の面積は1辺の長さが2の正三角形の面積の

 \Bigl( \dfrac{\sqrt{3}/3-1/2}{\sqrt{3}/3}\Bigr)^2=\Bigl(\dfrac{2-\sqrt{3}}{2}\Bigr)^2=\dfrac{7-4\sqrt{3}}{4}倍だから,

3+\dfrac{\pi}{4}+\sqrt{3}\cdot\Bigl(1-\dfrac{7-4\sqrt{3}}{4}\Bigr)=3+\dfrac{\pi}{4}+\dfrac{12-3\sqrt{3}}{4}=\dfrac{\pi}{4}+6-\dfrac{3\sqrt{3}}{4}


2022.05.02記

[解答]
求める範囲は,半径が\dfrac{1}{2}の円板(円の周または内部)が1辺の長さが2の正三角形の周上を動くときの通過範囲であり,次図のようになる.

刳り貫かれる正三角形について考える.
内接円の半径が r の正三角形の一辺の長さは a=2\sqrt{3}r であり,その面積は
3\times\dfrac{ar}{2}=3\sqrt{3}r^2 である.

1辺の長さが2の正三角形の内接円の半径は \dfrac{\sqrt{3}}{3} であるから,刳り貫かれる正三角形の内接円の半径は \dfrac{\sqrt{3}}{3}-\dfrac{1}{2} であるから,刳り貫かれる正三角形の面積は
3\sqrt{3}\cdot\left(\dfrac{2\sqrt{3}-3}{6}\right)^2=\dfrac{7\sqrt{3}-12}{4}
である.

よって求める面積は
半径\dfrac{1}{2} の円,\dfrac{1}{2}\times 2の長方形3個、1辺2の正三角形の面積の和から刳り貫かれる正三角形の面積を引けば良く,
\dfrac{\pi}{4}+3+\sqrt{3}-\dfrac{7\sqrt{3}-12}{4}=\dfrac{\pi}{4}+6-\dfrac{3\sqrt{3}}{4}
となる.

ミンコフスキー和を用いれば,刳り貫く前の図形の面積は
(\mbox{円})\oplus(\mbox{正三角形})
の面積だから,
円の面積,正三角形の周×円の半径,正三角形の面積の和となり,[解答]の

半径\dfrac{1}{2} の円,\dfrac{1}{2}\times 2の長方形3個、1辺2の正三角形の面積の和

にちゃんとなっている.