[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1989年(昭和64年)東京大学-数学(文科)[4]

半径 r の円 \rm O のまわりに一辺の長さ a の正三角形 \rm ABC を円 \rm O と同一平面内で次の二条件を満たしながら可能な限り移動させる.

(i) \triangle\rm ABC は円 \rm O の内部と共有点を持たず,円 \rm O の周とただ一点を共有する.

(ii) ベクトル \overrightarrow{\rm AB}\overrightarrow{\rm BC}\overrightarrow{\rm CA}
はそれぞれ一定に保たれる.

このとき,\triangle\rm ABC の通過し得る範囲を図示して,その面積 S を求めよ.さらに,\triangle\rm ABC の面積を T とするとき,r\to0 としたときの極限値 \displaystyle\lim_{r\to0}\dfrac{S}{T} を求めよ.

本問のテーマ
ミンコフスキー和 

2020.08.22記

ミンコフスキー和

[大人の解答]
半径 r の円を U(r),与えられた正三角形を K とすると求める図形は U(r)\oplus(K\ominus K) となる.

K\ominus K は一辺 a の正六角形だから,面積が \dfrac{3\sqrt{3}a^2}{2} であり,周の長さは 6r である.

よってU(r)\oplus(K\ominus K) の面積は \dfrac{3\sqrt{3}a^2}{2}+6r\cdot r +\pi r^2 となるので,求める面積は S=\dfrac{3\sqrt{3}a^2}{2}+6r\cdot r となる.

r\to 0 とすると,SK\ominus Kの面積,つまり一辺が a の正六角形の面積に近づき,これは K の面積 T の6倍だから,求める極限は 6

2021.01.24記
そういえば,大数2021年1月号の宿題にこのミンコフスキー和を使えば瞬殺となる問題が出題された.

2021.06.11記

懐しい資料が見つかった

問題の意味するところを理解して,図の概略が描ければよい.極限の部分は単に r=0 を代入するだけであるが,円 \rm O が1点につぶれた場合に \triangle\rm ABC の通過し得る範囲は正六角形となる.これは前半がわからなくても独立に求められるが,実は前半部分のヒントになっている.

2022.04.25記
栄光学園中学2021年算数にこの問題が出た.
2021年(令和3年)栄光学園中学-算数[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
こうやって東大入試は形を変えて中学入試に出ることになる.