[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1976年(昭和51年)東京大学-数学(文科)[4]旧課程

2023.08.12記

[4](旧課程)
a を整数とする.整式 f(x)=x^5-ax-1 が整数を係数とする 2 つの(正の次数の)整式の積に表わされるような a を求めよ.またそのような a について f(x) を上のような積に分解せよ.


本問のテーマ
モニック多項式の整数根となるための必要条件は定数項の約数

2023.08.16記

[解答]
5次式が因数分解できるとき,必ず1次式か2次式を因数にもつ.

(1) f(x) が1次の因数をもつとすると,f(x)=0 の整数解は定数項 1 の約数である.

(i) f(1)=-a=0 のとき,f(x)=x^5-1=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)

(ii) f(-1)=a-2=0 のとき,f(x)=x^5-2x-1=(x+1)(x^4-x^3+x^2-x-1)

(2) f(x) が2次の因数をもつとする.

(i) f(x)=x^5-ax-1=(x^2+px+1)(x^3+qx^2+rx-1)因数分解できるとき
4次、3次、2次の係数比較により
p+q=0,pq+r+1=0,pr+q-1=0
となる.q を消去して
r+1=p^2,pr-p-1=0
となり,r を消去して
p(p^2-1)-p-1=p^3-2p-1=(p+1)(p^2-p-1)=0
から整数 pp=-1となり,q=1,r=0 となり
f(x)=(x^2-x+1)(x^3+x^2-1)=x^5+x-1 から a=-1

(ii) f(x)=x^5-ax-1=(x^2+px-1)(x^3+qx^2+rx+1)因数分解できるとき
4次、3次、2次の係数比較により
p+q=0,pq+r-1=0,pr-q+1=0
となる.q を消去して
r-1=p^2,pr+p+1=0
となり,r を消去して
p(p^2+1)+p+1=p^3+2p+1=0
となるが,p^3+2p+1=0 の整数解は存在すれば定数項の約数 \pm1でなければならないが,いずれも満たさないので整数解をもたず,不適.

以上から
a=0 のとき,f(x)=x^5-1=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)
a=2 のとき,f(x)=x^5-2x-1=(x+1)(x^4-x^3+x^2-x-1)
a=-1 のとき,f(x)=(x^2-x+1)(x^3+x^2-1)