[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1976年(昭和51年)東京大学-数学(理科)[2]

2023.08.12記

[2] 時刻 t=0 に原点を出発し,xy平面上で次の条件(i),(ii) に従っていろいろに運動する動点 \mbox{P} がある.

(i) t=0 における \mbox{P} の速度を表わすベクトルの成分は(1,\sqrt{3}) である.

(ii) 0\lt t\lt 1 において,\mbox{P} は何回か(1 回以上有限回)直角に左折するが,そのときを除けば \mbox{P} は一定の速さ 2 で直進する.(ただし,左折するのに要する時間は 0 とする)

このとき,時刻 t=1 において \mbox{P} が到達する点を \mbox{Q} として,\mbox{Q}の存在しうる範囲を図示せよ.

2023.08.16記

[解答]
前進した時間を x,左に進んだ時間を y,後退した時間を z,右に進んだ時間を wとすると,少なくともまず直進し,その後1回左折するので x,y\gt 0z,w\geqq0である.

\mbox{Q} の位置ベクトルは長さが2のベクトル \vec{x}=(1,\sqrt{3})\vec{y}=(-\sqrt{3},1)を用いて
\vec{\mbox{OQ}}=(x-z)\vec{x}+(y-w)\vec{y}x+y+z+w=1
と表すことができる.ここで
X=x-zY=y-wZ=x+zW=y+w
とおくと,
x\gt 0y\gt 0z\geqq0w\geqq0x+y+z+w=1

X+Z\gt 0Y+W\gt 0Z-X\geqq 0W-Y\geqq0Z+W=1
つまり
-Z\lt p\leqq Z-W\lt q\leqq WZ+W=1
となる.このような X,Y,Z,W が存在するとき,-Z\lt Z-W\lt WZ+W=1 が成立することから Z,W\gt 0 となり,0\lt Z\lt 1 となる.ここでZ を固定すると
-Z\lt X\leqq Z-(1-Z)\lt Y\leqq 1-Z
であるから,(X,Y) の動く領域は4点 (\pm Z,\pm(1-Z))(複号任意)を頂点とする正方形の内部および上と右の辺(左上と右下の頂点は除く)となることがわかる.

これを 0\lt Z\lt 1 で動かすことにより,(X,Y)の存在範囲は「 |X|+|Y|\lt 1」または「X+Y=10\lt X\lt 1)」となる.


よって \vec{\mbox{OQ}}=X\vec{x}+Y\vec{y} の存在しうる範囲は

となる.

三角不等式により |x-z|+|y-w|\leqq x+y+z+w=1 となることはすぐにわかるが,これは必要条件なので除外点の議論が必要である.
要は x\gt 0y\gt 0 だから,x+y=1 とはなるが,x+w,z+y,z+w は1にはなれないので,|x-z|+|y-w|=1 の表す正方形にうち,x+y=1の表す辺(両端除く)以外は含まれないということである.

[別解]

X+Y=(x-z)+(y-w)\leqq (x-z)+(y-w)+2z+2w=x+y+z+w=1
(等号は z=w=0),
-X-Y=(z-x)+(w-y)\lt (z-x)+(w-y)+2x+2y=x+y+z+w=1
-X-Yx,y\to 0で限りなく 1 に近づく),
X-Y=(x-z)+(w-y)\lt (x-z)+(w-y)+2z+2y=x+y+z+w=1
X-Yy,z\to 0で限りなく 1 に近づく),
-X+Y=(z-x)+(y-w)\lt (z-x)+(y-w)+2y+2w=x+y+z+w=1
-X-Yy,w\to 0で限りなく 1 に近づく),
つまり
-1\lt X+Y\leqq 1-1\lt X-Y\lt 1
をみたす範囲すべてを動き得るから


となる(以下略).

[解答]や[別解]では場合分けをしなくて済むようにややテクニカルな変形を行ったが
例えば xz は互いに打ち消し合うので x-z が正は負で場合分けをするのが自然である.そこで

[別解2]
x=z+Xy=w+Y とおくと


(i) \mbox{Q}の存在しうる範囲のうち第1象限について

x\gt zy\gt wのとき X\gt 0Y\gt 0 だから
x\gt 0y\gt 0z\geqq0w\geqq0x+y+z+w=1

z+X\gt 0(成り立つ),w+Y\gt 0(成り立つ),z\geqq0w\geqq0X+Y=1-2(z+w)
となるので,X+Y\leqq 1X,Y\gt 0)となる.

(ii) \mbox{Q}の存在しうる範囲のうち第4象限と上側の境界について

x\gt zy\leqq wのとき X\gt 0,Y\leqq 0 だから
x\gt 0y\gt 0z\geqq0w\geqq0x+y+z+w=1

z+X\gt 0(成り立つ),y\gt 0z\geqq0y+(-Y)\geqq0(成り立つ),X+(-Y)=1-2(z+y)
となるので,X-Y\lt 1X\gt 0,Y\leqq 0)となる.

(iii) \mbox{Q}の存在しうる範囲のうち第2象限と右側の境界について

x\leqq zy\gt wのとき X\leqq 0,Y\gt 0 だから
x\gt 0y\gt 0z\geqq0w\geqq0x+y+z+w=1

x\gt 0w+Y\gt 0(成り立つ),x+(-X)\geqq0(成り立つ),w\geqq0(-X)+Y=1-2(x+w)
となるので,-X+Y\lt 1X\leqq 0,Y\gt 0)となる.

(iv) \mbox{Q}の存在しうる範囲のうち第3象限と上側と右側の境界について

x\leqq zy\leqq wのとき x=z+Xy=w+YX\leqq 0,Y\leqq 0)とおくと
x\gt 0y\gt 0z\geqq0w\geqq0x+y+z+w=1

x\gt 0y\gt 0x+(-X)\geqq0(成り立つ),y+(-Y)\geqq0(成り立つ),(-X)+(-Y)=1-2(x+y)
となるので,-X-Y\lt 1X\leqq 0,Y\leqq 0)となる.

以上を図示して


となる(以下略).