[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2020年(令和2年)東京大学数学(文科)[1]

2020.10.14記

[1] a\gt 0b \gt 0とする.座標平面上の曲線 C: y=x^3-3ax^2+b が,以下の2条件を満たすとする.

条件1:Cは x 軸に接する.

条件2:x 軸とCで囲まれた領域(境界は含まない)に,x 座標とy 座標がともに整数である点がちょうど1個ある.

ba で表し,a のとりうる値の範囲を求めよ.

2020.02.27記

[解答]
Cx 軸に接し,x 軸と C で囲まれる領域が存在するので y=f(x)=(x-p)^2(x-q) なる実数 p,q(p\neq q) が存在する.よって 3a=2p+q, p^2+2pq=0, b=-p^2q が成立する.

第3式で b>0 であるから p\neq 0, q<0 であり,第2式から p=-2q となるので,第1式から a=-q となり b=-4q^3=4a^3 となる.これは a>0 をみたしている.

このとき y=(x+a)(x-2a)^2 が成立する.

さて,x 軸と C で囲まれた領域の内部は y>0 の範囲にあり,原点が C の境界に含まれることから,条件2をみたす格子点は (0,1) である.よって 1\lt f(0)=(0+a)(0-2a)^2=4a^3\leqq 2,つまり \dfrac{1}{\sqrt[3]{4}} \lt a\leqq\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}} が必要である.

このとき,この範囲に他の格子点が含まれないことを示すが,C と x 軸の共通部分は -a\leqq x\leqq 2a であり,-1\lt -\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}} \leqq -a 1\lt \sqrt[3]{2}\lt 2a\leqq\sqrt[3]{4} であるから,(1,1) が含まれなければ十分であり,その条件は1\leqq f(1)=(1+a)(1-2a)^2 つまり 0\lt a\leqq \dfrac{\sqrt{3}}{2} である.

ここで  \left(\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}\right)^6 - \left( \dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)^6=-\dfrac{11}{64}\lt 0 だから,(1,1)C の外にある.

よって求める a の範囲は \dfrac{1}{\sqrt[3]{4}}\lt a\leqq\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}} となる.

駿台の解答の、(1,1)が領域の内部に含まれない議論は、ちょっと格好良い。
x座標が1に至る前にy座標が1未満になるという議論なのだが、普通の受験生にはちょっと意味がわかりにくいかも知れないが。

そのやり方をパクるなら、

f(1) < f(a) \leqq 1だから(1,1)は領域の内部に含まれない

と書く方がわかり良い。