[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1980年(昭和55年)東京大学-数学(理科)[6]

2023.08.22記

[6] xy 平面の第1象限にある点 \mbox{A} を頂点とし,原点 \mbox{O}x 軸上の点 \mbox{B} を結ぶ線分 \mbox{OB} を底辺とする二等辺三角形\mbox{A}\mbox{O}=\mbox{AB})の面積を s とする.この三角形と不等式 xy\leqq1 で表される領域との共通部分の面積を求め,これを s の関数として表せ.

本問のテーマ
xy=1 を自分自身にうつす一次変換 

2020.11.25記

xy=1 を自分自身にうつす一次変換

xy=1 を自分自身にうつす一次変換は X=kxY=\dfrac{1}{k}y または X=kyY=\dfrac{1}{k}x のいずれかに限られるが,ここでは前者に着目する.

また,原点と xy=1x=\alphaから\beta までの弧(0\lt \alpha\lt \beta)で作られる部分の面積が、\log\dfrac{\beta}{\alpha}となることは有名で,これが \mbox{O}(0,0)\mbox{A}(\alpha,1/\alpha)\mbox{B}(\beta,1/\beta) としたときの
線分\mbox{OA},線分\mbox{OB}xy=1の弧\mbox{AB}で囲まれる部分の面積に等しいことも有名.

[解答]
{\rm B}(b,0) とする.
1次変換 \begin{pmatrix} 2/b & 0 \\ 0 & b/2 \end{pmatrix} で全体をうつしても面積は変わらないので,{\rm O}(0,0),{\rm B}'(2,0),{\rm A}'(1,s) で囲まれる三角形と xy\leqq 1 の共通部分の面積を求めれば良い.

(i) s\leqq 1 のとき
s=1 のときの xy=1x=1 における接線が \rm A'B' となることに注意すると,
\triangle\rm OA'B'xy\leqq 1 の領域にあるので
S=s

(ii) s\geqq 1 のとき{\rm OA}'xy=1 の交点の x 座標を \alpha\rm A'B'xy=1 の交点の x 座標を \beta とすると,共通部分は

(0,0)(\alpha,1/\alpha) を結ぶ線分,(0,0)(\beta,1/\beta) を結ぶ線分,(\alpha,1/\alpha)(\beta,1/\beta) を結ぶxy=1 の弧で囲まれる部分の面積 \log\dfrac{\beta}{\alpha}

(0,0)(2,0)(\beta,1/\beta) を3頂点とする三角形の面積 \dfrac{1}{\beta}

の和であるから,
S=\log\dfrac{\beta}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}
となる.y=sx,y=-s(x-2)xy=1 の交点を求めると \alpha=\dfrac{1}{\sqrt{s}}\beta=\dfrac{s+\sqrt{s^2-s}}{s} であるから,
S=\log(\sqrt{s}-\sqrt{s-1})+s-\sqrt{s^2-s}