[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1980年(昭和55年)東京大学-数学(理科)[5]

2023.08.22記

[5] 1 辺の長さが 1 の正四面体 \mbox{A}_0\mbox{A}_1\mbox{A}_2\mbox{A}_3 がある.点 \mbox{P} はこの正四面体の辺上を毎秒 1 の速さで動き,各頂点に達したとき,そこから出る 3 辺のうちの1 辺を\dfrac{1}{3} ずつの確率で選んで進む.\mbox{P} は時刻 t=0 において頂点 \mbox{A}_0 にあるとする.また n を0または正の整数とし,点 \mbox{P} が時刻 t=n において頂点 \mbox{A}_i にある確率を
p_i(n) で表す(i=0123).

(1) 数学的帰納法を用いて,p_1(n)=p_2(n)=p_3(n) を証明せよ.

(2) p_0(n)p_1(n) の値を求めよ.

本問のテーマ

2020.11.25記

(1)は対称性から明らかだが,証明せよということなので漸化式を導いて、指定された通りに数学的帰納法を用いる.

[大人の解答]
(2) p_0(n+1)=p_1(n)p_1(n+1)=\dfrac{1}{3}p_0(n)+\dfrac{2}{3}p_1(n) という連立漸化式を解くか,直接考えることができる
p_0(n+1)=\dfrac{1}{3}(1-p_0(n)) を解くかすれば良い.

\begin{pmatrix} p_0(n+1) \\ p_1(n+1) \end{pmatrix}=
\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1/3 & 2/3 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} p_0(n) \\ p_1(n) \end{pmatrix}
の行列の n 乗を求めれば良い.

この行列は確率行列と呼ばれ,行和が1だから固有値 1とそれに対応する固有ベクトル \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}をもつ.

トレースからもう一つの固有値-\dfrac{1}{3} となり,それに対応する固有ベクトル\begin{pmatrix} 3 \\ -1 \end{pmatrix} である.

これを利用して行列の n 乗を求めれば良いが,2次行列の2つの固有値がわかれば行列の n 乗を行列の1次式に簡単に変形することができる.

固有値1,-\dfrac{1}{3} の2次行列 A について,
A^n=\dfrac{1-(-1/3)^n}{1-(-1/3)}(A-I)+II単位行列)が成立するので

\begin{pmatrix} p_0(n) \\ p_1(n) \end{pmatrix}=\dfrac{3+(-1/3)^{n-1}}{4} \begin{pmatrix} -1 \\ 1/3 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} 1 \\ 0\end{pmatrix}
となり,
p_0(n)=-\dfrac{3+(-1/3)^{n-1}}{4}+1=\dfrac{1-(-1/3)^{n-1}}{4}
p_1(n)=\dfrac{1-(-1/3)^{n}}{4}
となる.

もちろん,p_0(n)+3p_1(n)=1 を利用して片方からもう片方を求めても良い.

2023.08.22記

[解答]
(1) p_1(0)=p_2(0)=p_3(0)=0 により n=0 のとき成立.

p_1(k)=p_2(k)=p_3(k) を仮定すると
p_1(k+1)=\dfrac{p_0(k)+p_2(k)+p_3(k)}{3}
p_2(k+1)=\dfrac{p_0(k)+p_1(k)+p_3(k)}{3}
p_3(k+1)=\dfrac{p_0(k)+p_1(k)+p_2(k)}{3}
はすべて等しい.よって数学的帰納法よりすべての負でない整数 n についてp_1(n)=p_2(n)=p_3(n) である.

(2) p_0(n)+p_2(n)+p_2(n)+p_3(n)=1p_1(n+1)=\dfrac{p_0(n)+p_2(n)+p_3(n)}{3} から
p_1(n+1)=-\dfrac{1}{3}p_1(n)+\dfrac{1}{3}
となり p_1(0)=0 とから
p_1(n)=\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{4\cdot (-3)^{n}}
となり,
p_0(n)=\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{4\cdot (-3)^{n-1}}
となる.