[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1984年(昭和59年)東京大学-数学(文科)[2]

2023.08.25記

[2] xy 平面上に,海を隔てて2国 \mbox{A}\mbox{B} がある.\mbox{A} の領土は不等式 x^2+{(y-7)}^2\leqq 4 で表される領域であり,\mbox{B} の領土は不等式 y\leqq 0 で表される領域であるという.

いま \mbox{A} の領海を次の3条件(1),(2),(3)を満たす点 \mbox{P} 全体の集合と定める:

(1) \mbox{P}\mbox{A}\mbox{B} いずれの領土にも含まれない.

(2) \mbox{P}\mbox{A} の領土との間の最短距離は 4 より小さい.

(3) \mbox{P}\mbox{A} の領土との間の最短距離は,\mbox{P}\mbox{B} の領土との間の最短距離より小さい.

\mbox{A} の領海の面積を求めよ.

2020.11.30記

[解答]
条件(1) より 4\lt x^2+(y-7)^2 かつ y\gt 0

条件(2) より x^2+(y-7)^2\lt (2+4)^2=6^2

条件(3) の境界上の点は,定点 (7,0) との距離と定直線 y=-2 への距離が等しい点の軌跡であり,それは、定点 (7,0) を焦点,定直線 y=-2 を準線とする放物線 y=\dfrac{x^2}{18}+\dfrac{5}{2} であるから,条件 (3) より y\gt \dfrac{x^2}{18}+\dfrac{5}{2}

よって,条件を図示すると
4\lt x^2+(y-7)^2\lt 6^2 かつ y\gt \dfrac{x^2}{18}+\dfrac{5}{2}
が求める領海となるので,その面積は
\dfrac{2\pi}{3}\cdot 6^2+\dfrac{1}{2}\cdot 6^2\sin\dfrac{2\pi}{3}-\pi\cdot 2^2-\dfrac{1}{6\times 18}(6\sqrt{3})^3=20\pi+15\sqrt{3}

積分が閉区間で定義されるように,高校で面積を考えるときは厳密には境界を含むべきではあろうが,それほど気にしていないようだ.