[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2000年(平成12年)京都大学前期-数学(理系)[3]

2020.09.04記

[3]
\vec{a}=(1,0,0)\vec{b}=\Bigl(\cos\dfrac{\pi}{3},\sin\dfrac{\pi}{3},0\Bigr)とする.

(1) 長さ1の空間ベクトル \vec{c} に対し,\cos\alpha=\vec{a}\cdot\vec{c}\cos\beta=\vec{b}\cdot\vec{c} とおく.このとき次の不等式 (\ast) が成り立つことを示せ.

(\ast)\quad \cos^2\alpha-\cos\alpha\cos\beta+\cos^2\beta\leqq\dfrac{3}{4}

(2) 不等式 (\ast) を満たす (\alpha,\beta)0\leqq\alpha\leqq\pi,0\leqq\beta\leqq\pi)の範囲を図示せよ.

2020.09.04記
(1) 3つの単位ベクトルが互いになす角度が \alpha,\beta,\dfrac{\pi}{3} とするとき,3つのベクトルでできる平行6面体の体積 V について
四面体の体積を求めるオイラーの公式 - 球面倶楽部 零八式 mark II
により
 V^2=1+\cos\alpha\cos\beta-\cos^2\alpha-\cos^2\beta-\dfrac{1}{4}\geqq 0
が成立する(平行6面体がつぶれても良い).

(2) 平行6面体の1頂点に集まる3つの角度は

(a) それぞれ 0 より大きく \pi 未満
(b) 3つの和は 2\pi 未満
(c) 2つの和は残りの1つより大きい

という条件をみたす.今回は一致しても良いので等号を含む.

任意の\alpha,\betaに対して成立する不等式は正確には  -\dfrac{1}{4} \leqq \cos^2\alpha -\cos\alpha\cos\beta+\cos^2\beta\leqq\dfrac{3}{4}であるが,条件(\ast)はそれを全て含んでいるので,結局、平行6面体ができるような任意の\alpha,\betaのみたす領域を考えれば良い.

よって,0\leqq\alpha,\beta\leqq\pi\dfrac{1}{3}\pi\leqq \alpha+\beta\leqq \dfrac{5}{3}\pi -\dfrac{1}{3}\pi \leqq \alpha-\beta\leqq\dfrac{1}{3}\pi を図示すれば良い.

それは \Bigl(0,\dfrac{1}{3}\pi\Bigr)\Bigl(\dfrac{1}{3}\pi,0\Bigr)\Bigl(\pi,\dfrac{2}{3}\pi\Bigr)\Bigl(\dfrac{2}{3}\pi,\pi\Bigr) を4頂点とする長方形の周または内部となる.

1991年(平成3年)京都大学後期-数学(理科)[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
も参照のこと.