[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1984年(昭和59年)東京大学-数学(理科)[2]

2023.08.25記

[2] xy 平面において,直線 x=0L とし,曲線 y=\log xC とする.さらに,L上,または C 上,または LC との間にはさまれた部分にある点全体の集合を \textsf{A} とする.\textsf{A} に含まれ,直線 L に接し,かつ曲線 C
(t,\log t)0\lt t)において共通の接線をもつ円の中心を \mbox{P}_t とする.

\mbox{P}_tx 座標,y 座標を t の関数として x=f(t)y=g(t) と表したとき,次の極限値はどのような数となるか.

(i) \displaystyle\lim_{t\to0}\dfrac{f(t)}{g(t)}

(ii) \displaystyle\lim_{t\to+\infty}\dfrac{f(t)}{g(t)}

本問のテーマ
双曲線関数(2023.09.16)

2020.11.28記
i) t\to 0\rm OP の傾きの逆数は 0 以上、\rm OQ の傾きの逆数未満であり,\rm OQ の傾きの逆数 \dfrac{t}{\log t}0 に収束するので答は 0

ii) t\to \infty\dfrac{\log t}{t} は 0 に収束するので,曲線はほぼ x 軸であるとみなすことができ,円の中心はほぼ y=x 上にあると考えて良く,答は 1

と予想できる.

[解答]
(t,\log t) の上側の法線向きは (-1,t) だから
\overrightarrow{{\rm P}_t{\rm Q}_t}=s(-1,t) とおくと
f(t)=t-s,g(t)=\log t +st
とおけ,{\rm P}_t{\rm Q}_t={\rm P}_t{\rm R}_t から s=\dfrac{t}{1+\sqrt{1+t^2}} となり
f(t)=\dfrac{t\sqrt{1+t^2}}{1+\sqrt{1+t^2}}g(t)=\log t +\dfrac{t^2}{1+\sqrt{1+t^2}}
から
\dfrac{f(t)}{g(t)}=\dfrac{t\sqrt{1+t^2}}{t^2+(1+\sqrt{1+t^2})\log t}
となるので,この極限をとれば良い.

t\to0 のときは (分母)\to -\infty(分子)\to 0 から 0 に収束

t\to\infty のときは \dfrac{(分母)}{t^2}=1+\Bigl(\dfrac{1}{t}+\sqrt{\dfrac{1}{t^2}+1}\Bigr) \dfrac{\log t}{t} \to 1
\dfrac{(分子)}{t^2}=\sqrt{\dfrac{1}{t^2}+1} \to 1 から 1 に収束

2023.09.26記

[別解]
次図において,
\tan\theta=\dfrac{x}{\sqrt{1+t^2}} のとき,
\tan2\theta=t,つまり \cos2\theta=\dfrac{1}{\sqrt{1+t^2}} である.

よって,
\tan^2\theta=\dfrac{1-\cos2\theta}{1+\cos2\theta}
=\dfrac{\sqrt{1+t^2}-1}{\sqrt{1+t^2}+1}=\dfrac{t^2}{(\sqrt{1+t^2}+1)^2}
となり,\tan\theta\gt 0 から
\tan\theta=\dfrac{x}{\sqrt{1+t^2}}=\dfrac{t}{\sqrt{1+t^2}+1}
となる.よって
f(t)=x=\dfrac{t\sqrt{1+t^2}}{\sqrt{1+t^2}+1}
となる.また,接線の y 切片が \log t-1 であることから
g(t)=y=\log t-1+\sqrt{1+t^2}
となる.よって
\dfrac{f(t)}{g(t)}=\dfrac{t\sqrt{1+t^2}}{(\sqrt{1+t^2}+1)(\log t-1+\sqrt{1+t^2})}
=\dfrac{t\sqrt{1+t^2}}{t^2+(1+\sqrt{1+t^2})\log t}
となるので,この極限をとれば良い.

[別解]では分子の有理化を行ったが,分母を有理化しても良い.すると
f(t)=x=\dfrac{(\sqrt{1+t^2})(\sqrt{1+t^2}+1)}{t}=\dfrac{1+t^2+\sqrt{1+t^2}}{t}
となる.どのように求めるかによって表現が異なるが同じものである.

[別解2]
次図のように線分の長さを与えると,直角3角形の斜辺の傾きが \dfrac{1}{t} だから
s=\sqrt{1+t^2} として
(s+x):(x+u):(u+s)=1:t:s
となる.

よって
x:s=(1+t-s):(1-t+s)
となり,
f(t)=x=\dfrac{s(1+t-s)}{1-t+s}
=\dfrac{\sqrt{1+t^2}+t\sqrt{1+t^2}+1+t^2}{1-t+\sqrt{1+t^2}}
となる.(以下略)

この f(t) は[解答]や[別解]と一見異なるように見えるが,実は同じ式であり,極限をとるときもそれほど違いはない.

双曲線関数を用いて t=\sinh2\theta とおくと \sqrt{1+t^2}=\cosh2\theta であるから,[別解2]のf(t)
f(t)=\cosh2\theta\dfrac{1+\sinh2\theta-\cosh2\theta}{1-\sinh2\theta+\cosh2\theta}
=\cosh2\theta\dfrac{-2\sinh^2\theta+2\sinh\theta\cosh\theta}{2\cosh^2\theta-2\sinh\theta\cosh\theta}
=\cosh2\theta\dfrac{\sinh\theta(-\sinh\theta+\cosh\theta)}{\cosh\theta(\cosh\theta-\sinh\theta)}
=\cosh2\theta\dfrac{\sinh\theta}{\cosh\theta}
となり,[解答]のf(t)
f(t)=\dfrac{\sinh2\theta\cosh2\theta}{1+\cosh2\theta}=\dfrac{2\sinh\theta\cosh\theta\cosh2\theta}{2\cosh^2\theta}
=\cosh2\theta\dfrac{\sinh\theta}{\cosh\theta}
だから確かに一致している.

[大人の解答]
(途中から)
f(t)=\dfrac{\cosh2\theta\sinh\theta}{\cosh\theta}
g(t)=\log \sinh 2\theta-1+\cosh2\theta
であるから,
\dfrac{f(t)}{g(t)}=\dfrac{\cosh2\theta\sinh\theta}{\cosh\theta(\log \sinh 2\theta-1+\cosh2\theta)}
=\tanh\theta\cdot \dfrac{\cosh2\theta}{\log \sinh 2\theta-1+\cosh2\theta}
=\tanh\theta\cdot \dfrac{1}{\dfrac{\log \sinh 2\theta-1}{\cosh2\theta}+1}
となる.

(i) t\to +0\theta\to +0\tanh\theta\to +0\cosh2\theta\to 1\log\sinh2\theta\to-\infty だから
\dfrac{f(t)}{g(t)}\to 0

(ii) t\to +\infty\theta\to +\infty\tanh\theta\to 1\cosh 2\theta\to+\infty\log\sinh2\theta\to 2-\log 2 だから
\dfrac{f(t)}{g(t)}\to 1

となる.