[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1984年(昭和59年)東京大学-数学(理科)[1]

2023.08.25記

[1] 空間内の点の集合 \{(x,y,z) \,|\, 0\leqq y,0\leqq z \} に含まれ,原点 \mbox{O} において x 軸に接し,xy 平面と45^{\circ}の傾きをなす,半径 1 の円板 C がある.座標が (0,0,2\sqrt{2}) の位置にある点光源 \mbox{P} により,xy 平面上に投ぜられた円板 C の影を S とする.

(i) S の輪郭を表す xy 平面上の曲線の方程式を求めよ.

(ii) 円板 C と影 S の間にはさまれ,光の届かない部分のつくる立体の体積を求めよ.

本問のテーマ
円錐の方程式
極射影(立体射影)

2020.11.28記
円錐面の切り口は二次曲線、という話なのだが
1980年(昭和55年)東京大学-数学(理科)[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
と同様、立体射影である.

[大人の解答]
C の中心 \left(0,\dfrac{1}{\sqrt{2}},\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right) を通り Cを含む平面に垂直な直線と z 軸の交点の座標は (0,0,\sqrt{2}) で,これは \mbox{OP} の中点であるから,C の輪郭は \mbox{OP} を直径とする球面 x^2+y^2+(z-\sqrt{2})^2=2 に含まれる.

\rm P は球面のおける \rm O の対蹠点だから S の輪郭は C の点\rm P を極とする極射影の像となるので,\rm O(0,2\sqrt{2},0)(0,\sqrt{2},\sqrt{2}の像)を直径とする円となる.よって

(i) x^2+(y-\sqrt{2})^2=2 となる.

(ii) 円錐の体積の引き算で
\dfrac{1}{3}\pi (\sqrt{2})^2\cdot 2\sqrt{2}-\dfrac{1}{3}\pi (1)^2\cdot 2=\dfrac{4\sqrt{2}-2}{3}\pi

普通に円錐曲線の話だと

[大人の解答]
(i) \rm PC の輪郭を結んでできる斜円錐の xy 平面による切り口が S の輪郭であり,それら閉じた曲線となるので楕円である.その楕円は y 軸対称で原点と (0,2\sqrt{2},0)(0,\sqrt{2},\sqrt{2}の像)を通るので
 k x^2+(y-\sqrt{2})^2=2 と書くことができる.さらに (1,\sqrt{2},\sqrt{2}) の像 \dfrac{4}{3}(1,\sqrt{2},0) を通るので  \dfrac{16k}{9}+\dfrac{2}{9}=2 から k=1 となり,求める楕円の方程式は円 x^2+(y-\sqrt{2})^2=2 となる.

空間の円のパラメータ表示を使うと

[解答]
(i) 円 C の輪郭は \Bigl(\cos\theta,\dfrac{1+\sin\theta}{\sqrt{2}},\dfrac{1+\sin\theta}{\sqrt{2}}\Bigr) となる.
この点と \rm P を結ぶ直線
\begin{pmatrix} x\\ y\\ z \end{pmatrix}=(1-t)\begin{pmatrix} 0\\ 0\\ 2\sqrt{2} \end{pmatrix}+t\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \dfrac{1+\sin\theta}{\sqrt{2}} \\\dfrac{1+\sin\theta}{\sqrt{2}} \end{pmatrix}
xy 平面の交点を求めると
X=\dfrac{4\cos\theta}{3-\sin\theta},Y=\dfrac{2\sqrt{2}(1+\sin\theta)}{3-\sin\theta}
となるので \cos^2\theta+\sin^2\theta=1 を利用して \theta を消去すると
 8X^2+(3Y-2\sqrt{2})^2=(Y+2\sqrt{2})^2
となり,整理して X^2+Y^2-2\sqrt{2}Y=0 となる.

2023.08.25記
極射影の円円対応(この場合は球球対応だが)は結局方羃の定理を使うことになるので,極射影の答案は方羃の定理を使って表現されることになる.

[解答] C の周上の点を \mbox{Q} とし,\mbox{Q} に対応する影 S の輪郭上の点を \mbox{R} とすると,\triangle\mbox{OPQ}\triangle\mbox{RPO} だから
\mbox{PQ}\cdot\mbox{PR}=\mbox{PO}^2=8
と,\mbox{Q} の位置によらず一定となるので,方羃の定理の逆により,
\mbox{O}\mbox{P}\mbox{Q}C の周を含み \mbox{PO} に接する球面上にあることがわかる.

対称性により,この球面の中心は y 軸上にあり,\mbox{Q}(0,\sqrt{2},\sqrt{2}) のときに\mbox{R}(0,2\sqrt{2},0) となることに注意すると
x^2+(y-\sqrt{2})^2+z^2=(\sqrt{2})^2=2
となる.よって S の輪郭を表す方程式は z=0 との交わりを考えて
x^2+(y-\sqrt{2})^2=(\sqrt{2})^2=2
となる.

標準的な解答も載せておく.

[解答]
C の周は,C の中心 \left(0,\dfrac{1}{\sqrt{2}},\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right) を通り Cを含む球面と平面 y=z の交線だから,
x^2+\left(y-\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)^2+\left(z-\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)^2=1 かつ y=z
となる.整理すると

x^2+2y^2-2\sqrt{2}y=0 かつ y=z

となる.よって C 上の点を \mbox{Q}(\alpha,\beta,\gamma) とおくと,
\alpha^2+2\beta^2-2\sqrt{2}\beta=0 かつ \beta=\gamma
をみたす.

\mbox{Q}\mbox{PR} の内分点だから,\mbox{R}(X,Y,0) とおくと
(\alpha,\beta,\beta)=(1-t)(0,0,2\sqrt{2}) + t(X,Y,0)
と表すことができるので,
\alpha=tX\beta=tY=2\sqrt{2}(1-t)
が成立する.このとき
\alpha^2+2\beta^2-2\sqrt{2}\beta=0 から
t^2(X^2+2Y^2)-2t\sqrt{2}Y=0
となるが,tY=2\sqrt{2}(1-t)から
\dfrac{1}{t}=\dfrac{Y+2\sqrt{2}}{2\sqrt{2}}
となることに注意すると,
X^2+2Y^2-(Y+2\sqrt{2})Y=0
つまり
X^2+Y^2-2\sqrt{2}Y=0
となる.