[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1986年(昭和61年)東京大学-数学(理科)[2]

2023.08.29記

[2] 長軸,短軸の長さがそれぞれ 42 である楕(だ)円に囲まれた領域を \mbox{A} とし,この楕円の短軸の方向に,\mbox{A}\dfrac{1}{2}(\sqrt6-\sqrt2) だけ平行移動してできる領域を \mbox{B} とする.このとき \mbox{A}\mbox{B} の共通部分 \mbox{C}=\mbox{A} \cap \mbox{B} の面積 M を求めよ.ただし \dfrac{1}{4}(\sqrt6+\sqrt2)=\cos\dfrac{\pi}{12} である.

注:方程式 \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1a\gt 0b\gt 0
で表される楕円において,2a2b の内大きい方を長軸の長さといい,他方を短軸の長さという.

本問のテーマ
楕円を円に変換する1次変換

2020.12.14記
楕円を円に変換すれば\dfrac{\pi}{12}の意味がわかる.

\dfrac{5\pi}{3}-1

が答.

2023.08.29記

[解答]
\mbox{A} の周の楕円の方程式を \dfrac{x^2}{2^2}+\dfrac{y^2}{1^2}=1
\mbox{B} の周の楕円の方程式を \dfrac{x^2}{2^2}+\dfrac{\left(y-\dfrac{1}{2}(\sqrt6-\sqrt2)\right)^2}{1^2}=1
として良い.領域 \mbox{A}\mbox{B}y 軸方向に 2 倍拡大した図形を領域 \mbox{A}'\mbox{B}' とするとそれらの領域は
x^2+y^2=4x^2+\left(y-(\sqrt6-\sqrt2)\right)^2=4
と共に半径2の円に囲まれた領域となる.

よって領域 \mbox{A}'\mbox{B}' の共通部分の面積は2つの合同な弓形の面積の和となり,それらの弓形の弦の長さは
2\sqrt{4-\left(\dfrac{1}{2}(\sqrt6-\sqrt2)\right)^2}=2\cdot \dfrac{1}{2}(\sqrt6+\sqrt2)=2\cos\dfrac{\pi}{12}
であるから,中心角 \dfrac{5}{6}\piの扇型から作られる弦となる.

よって領域 \mbox{A}'\mbox{B}' の共通部分の面積は
2\times\left(\dfrac{1}{2}2^2\dfrac{5}{6}\pi-\dfrac{1}{2}\times(\sqrt6-\sqrt2)\times2\cdot \dfrac{1}{2}(\sqrt6+\sqrt2)\right)
となり,求める面積はこの半分の
\dfrac{5\pi}{3}-1
となる.