[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1986年(昭和61年)東京大学-数学(理科)[6]

2023.08.29記

[6] 直円錐(すい)形のグラスに水が満ちている.水面の円の半径は 1,深さも 1 である.

(1) このグラスを右の図のように角度 \alpha だけ傾けたとき,できる水面は楕(だ)円である.この楕円の中心からグラスのふちを含む平面までの距離 l と,楕円の長半径 a および短半径 b を,m=\tan\alpha で表せ.
ただし楕円の長半径,短半径とは,それぞれ長軸,短軸の長さの\dfrac{1}{2} のことである.

(2) 傾けたときこぼれた水の量が,最初の水の量の \dfrac{1}{2} であるとき,
m=\tan\alpha の値を求めよ.ただしグラスの円錐の頂点から,新しい水面までの距離を h とするとき,残った水の量は,\dfrac{1}{3}\pi abh に等しいことを用いよ.

2020.12.14記
円錐の切り口の平面と円錐の両方に接する2つの球を考えると,切り口は、その2つの接点を焦点とする楕円になる、という話は有名で、それを利用して求めることもできるが,計算は座標を設定するのが簡単.

[解答]
円錐の軸を z 軸とすると、円錐の式は x^2+y^2=z^2 となる.
水面を z=m(y-1)+1 とおくことができるので,切り口を xy 平面に正射影した楕円の方程式は,z を消去して得られる
\dfrac{1+m}{1-m} x^2+(1+m)^2\Bigl(y-\dfrac{m}{1+m}\Bigr)^2=1
となる.

よってもとの楕円の短半径はこの楕円の短半径と同じく b=\sqrt{\dfrac{1-m}{1+m}} であり,
もとの楕円の長半径はこの楕円の長半径の \sqrt{1+m^2}倍で
a=\dfrac{\sqrt{1+m^2}}{1+m}となる.

また,l=a\sin\alpha=\dfrac{m}{1+m}である.

(2) 原点から平面までの距離は h=\dfrac{1-m}{\sqrt{1+m^2}} だから,残った水の量は
\dfrac{1}{3}\pi abh=\dfrac{1}{3}\pi\Bigl(\dfrac{1-m}{1+m}\Bigr)^{3/2}
であり,これがもとの体積 \dfrac{\pi}{3}の半分だから,
\Bigl(\dfrac{1-m}{1+m}\Bigr)^{3/2}=\dfrac{1}{2}
となり,m=\dfrac{\sqrt[3]{4}-1}{\sqrt[3]{4}+1}
となる.