[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1988年(昭和63年)東京大学-数学(理科)[3]

2023.08.29記

[3] Cy=x^3-x-1\leqq x\leqq 1 で与えられる xy 平面上の図形とする.次の条件をみたす xy 平面上の点 \mbox{P} 全体の集合を図示せよ.

C を平行移動した図形で,点 \mbox{P} を通り,かつもとの図形 C との共有点がただ1点であるようなものが,ちょうど3個存在する.」

2021.01.21記

[解答]
Cx 軸方向に 2ay 軸方向に 2b だけ平行移動した図形を D とする.

CD をあわせた図形を E とすると,C は原点対称な図形であることから,E(a,b) について点対称な図形である.よって,CD の共有点がただ1点の場合,その共有点は(a,b) でなければならず,それは C 上の点である.

よって (a,b)=(t,t^3-t)-1\lt t\lt 1)とおくことができ,よって Dy=(x-2t)^3-(x-2t)+2t^3-2t=:f(t;x)
2t-1\leqq x\leqq 2t+1\Leftrightarrow  \dfrac{x-1}{2}\leqq t\leqq \dfrac{x+1}{2})となるので,これをみたす相異なる -1\lt t\lt 1 が3つあるような (x,y) の範囲を図示すれば良い.

f(t;x)-yt微分すると -6(x-2t)^2+6t^2=-6(3t-x)(t-x) であるから,まず 極値をとる t の値について -1\lt \dfrac{x}{3} \lt 1,1\lt x \lt 1 が必要,つまり 1\lt x \lt 1 が必要で,このとき -1\lt \dfrac{x-1}{2}\leqq t\leqq \dfrac{x+1}{2}\lt 1 となるので,f(t;x)-y=0t^3 の係数が負であることに注意すると,

求める条件は f\Bigl(\dfrac{x-1}{2};x\Bigr)-y\geqq 0 かつ f\Bigl(\dfrac{x+1}{2};x\Bigr)-y\leqq 0 かつ
\{f(x,x)-y\}\Bigl\{f\Bigl(\dfrac{x}{3};x\Bigr)-y\Bigr\}\lt 0 となる.

ここで,F(x)=x^3-x=(x+1)x(x-1) とおくと F(-x)=-F(x)f(t;x)=F(x-2t)+2F(t) だから
f(x,x)=F(-x)+2F(x)=F(x)
f\Bigl(\dfrac{x}{3};x\Bigr)=F\Bigl(\dfrac{x}{3}\Bigr)+2F\Bigl(\dfrac{x}{3}\Bigr)=3F\Bigl(\dfrac{x}{3}\Bigr)
f\Bigl(\dfrac{x\pm 1}{2};x\Bigr)=F(\mp 1)+2F\Bigl(\dfrac{x\pm 1}{2}\Bigr)=2F\Bigl(\dfrac{x\pm 1}{2}\Bigr)
だから,求める条件は
F\Bigl(\dfrac{x-1}{2}\Bigr)-\dfrac{y}{2}\geqq 0 かつ F\Bigl(\dfrac{x+1}{2}\Bigr)-\dfrac{y}{2}\leqq 0 かつ
\{F(x)-y\}\Bigl\{F\Bigl(\dfrac{x}{3}\Bigr)-\dfrac{y}{3}\Bigr\}\lt 0 となる.

つまり,
y=F(x)(-1,0) 中心に2倍拡大した \dfrac{y}{2}=F\Bigl(\dfrac{x-1}{2}\Bigr)
つまり y=\dfrac{1}{4}(x+1)(x-1)(x+3) より下(境界含む)にあり,
y=F(x)(1,0) 中心に2倍拡大した \dfrac{y}{2}=F\Bigl(\dfrac{x+1}{2}\Bigr)
つまり y=\dfrac{1}{4}(x+3)(x-1)(x+1) より上(境界含む)にあり,
y=F(x) と,それを原点中心に3倍拡大した \dfrac{y}{3}=F\Bigl(\dfrac{x}{3}\Bigr)
つまり y=\dfrac{1}{9}(x+3)x(x-3) に挟まれた部分(境界除く)となる.


なお,DC に接しながら動くとき,D の右端点と C の左端点の中点が接点だから,D の右端点の軌跡は CCの左端点を中心に2倍に拡大した点となり, \dfrac{y}{2}=F\Bigl(\dfrac{x-1}{2}\Bigr) を描くことがわかる.

同様に、D の左端点の軌跡は CCの右端点を中心に2倍に拡大した点となり, \dfrac{y}{2}=F\Bigl(\dfrac{x+1}{2}\Bigr) を描くことがわかる.