[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1979年(昭和54年)東京大学-数学(理科)[1]

2023.08.19記

[1] xy 平面上の4点 \mbox{A}(0,0)\mbox{B}(1,0)\mbox{C}(1,1)\mbox{D}(0,1) を頂点とする正方形を \mbox{Q} とする.実数 t に対して一次変換
U_t=\begin{pmatrix} 1+t & t+t^2 \\ 0 & 1+t \end{pmatrix}
V_t=\begin{pmatrix} 1+t & 0 \\ t+t^2 & 1+t \end{pmatrix}
を考え,\mbox{Q}U_t によって写された図形と,\mbox{Q}V_t によって写された図形との共通部分の面積を S(t) とする.tt\geqq 0 の範囲を動くとき,t の関数 S(t) のグラフの概形を描き,S(t) のこの範囲での最大値を求めよ.

本問のテーマ
剪断(sheer,ずらし変換)

2023.08.19記
U_tV_t は剪断と拡大の合成変換である.

[解答]
A_t=\begin{pmatrix} 1 & t \\ 0 & 1 \end{pmatrix}B_t=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ t & 1 \end{pmatrix}
とおくと,U_t=(1+t)A_tV_t=(1+t)B_t であるから,
\mbox{Q}A_t によって写された図形と,\mbox{Q}B_t によって写された図形との共通部分(その面積をT(t)とする)を原点中心に 1+t 倍拡大したものが,\mbox{Q}U_t によって写された図形と,\mbox{Q}V_t によって写された図形との共通部分になる.
よって
S(t)=(1+t)^2T(t)
となる.

\mbox{Q}A_t によって写された図形は(剪断の意味を考えればすぐにわかるが,計算しても),4点(0,0)(1,0)(1+t,1)(t,1) を4頂点とする平行四辺形であり,\mbox{Q}B_t によって写された図形は4点(0,0)(1,t)(1,1+t)(0,1) を4頂点とする平行四辺形である.

よって
0\leqq t\leqq 1 のときは共有部分をもち,その面積は (0,0)(t,1)(1,1) からなる3角形の面積の2倍の 1-t となる(T(t)=1-t).なお t=1のときの共有部分は線分となり面積0となる.
t\gt 1 のときは共有部分をもたないので,共有部分面積は0である(T(t)=0).

以上から,
S(t)=\left\{\begin{array}{ll} (1-t)(1+t)^2 & (0\leqq t\leqq 1) \\ 0 & (t\gt 0) \end{array}\right.
となる.
(1-t)(1+t)^2=-(t+1)^2(t-1)極値が(3次関数が2×4の箱に閉じ込められることを用いると)t=-1で極小値 0t=\dfrac{1}{3} で極大値 \dfrac{32}{27} であることに注意すると,グラフは次図

よって S(t)t=\dfrac{1}{3} で最大値 \dfrac{32}{27} をとる.