[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1994年(平成6年)東京大学前期-数学(理科)[6]

2024.01.10記

[6] xy 平面上の 2\mbox{P}\mbox{Q} に対し,\mbox{P}\mbox{Q}x 軸または y 軸に平行な線分からなる折れ線で結ぶときの経路の長さの最小値をd(\mbox{P},\mbox{Q})で表す.

(1) 原点 \mbox{O}(0,0) と点 \mbox{A}(1,1) に対し,d(\mbox{O},\mbox{P})=d(\mbox{P},\mbox{A}) を満たす点 \mbox{P}(x,y) の範囲を xy 平面上に図示せよ.

(2) 実数 a\geqq 0 に対し,点 \mbox{Q}(a,a^2+1) を考える.次の条件(\ast)を満足する点 \mbox{P}(x,y) の範囲を xy 平面上に図示せよ.

\ast)原点 \mbox{O}(0,0) に対し,d(\mbox{O},\mbox{P})=d(\mbox{P},\mbox{Q}) となるような a\geqq 0 が存在する.

本問のテーマ
マンハッタン距離(L_1 距離)

2024.01.12記

[解答]
st 平面における t=|s|-|C-s|C\gt 0) のグラフを考えると
(a) s\leqq 0 のとき,t=-C
(b) 0\leqq s\leqq C のとき,t=2s-C(このとき |t|\leqq C),
(c) C\leqq s のとき,t=C
が成立するので,|s|-|C-s|=t について
(a') t=-C ならば s\leqq 0
(b') |t|\leqq C ならば t=2s-C
(c') t=C ならば C\leqq s
が成立する.

(1) |x|+|y|=|1-x|+|1-y| を図示すれば良い.

(i) x\leqq 0 のとき
-x+|y|=1-x+|1-y| から |y|-|1-y|=1 により(a') の場合で y\geqq 1

(ii) 0\leqq x\leqq 1 のとき
x+|y|=1-x+|1-y| から |y|-|1-y|=1-2x により(b') の場合で 1-2x=2y-1,つまり x+y=1

(iii) 1\leqq x のとき
x+|y|=x-1+|1-y| から |y|-|1-y|=-1 により(c') の場合で y\leqq 0

となり,これらを図示すれば良い(図示略).

(2) |x|+|y|=|a-x|+|a^2+1-y|a\gt 0 で動かしたときの通過領域を図示すれば良い.

-a\leqq |x-a|-|x|\leqq a であるから
a^2+1-\Bigl| |x-a|-|x| \Bigr|\geqq a^2+1-a=(a-1/2)^2+3/4\gt 0
が成立するので常に(b') の場合である.

(i) x\leqq 0 のとき
|y|-|a^2+1-y|=a から y=\dfrac{a^2+a+1}{2}

(ii) 0\leqq x\leqq a のとき
|y|-|a^2+1-y|=a-2x から y=-x+\dfrac{a^2+a+1}{2}

(iii) a\leqq x のとき
|y|-|a^2+1-y|=-a から y=\dfrac{a^2-a+1}{2}

となる.よって
\left(-\infty,\dfrac{a^2+a+1}{2}\right)
\left(0,\dfrac{a^2+a+1}{2}\right)
\left(a,\dfrac{a^2-a+1}{2}\right)
\left(+\infty,\dfrac{a^2-a+1}{2}\right)
を結ぶ折れ線となる.

よって aa\gt 0 で動かしたとき,
\left(a,\dfrac{a^2-a+1}{2}\right)y=\dfrac{x^2-x+1}{2} を描き,この頂点が \left(\dfrac{1}{2},\dfrac{3}{8}\right) であることに注意すると,

x\leqq 0 のとき y\geqq\dfrac{1}{2}
0\leqq x\leqq \dfrac{1}{2} のとき y\geqq \dfrac{x^2-x+1}{2}
\dfrac{1}{2}\leqq x のとき y\geqq \dfrac{3}{8}

を図示すれば良い.