[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1993年(平成5年)東京大学前期-数学(文科)[3]

2024.01.07記

[3] xyz 空間内の原点を中心とする半径 1 の球面
S=\{(x,y,z)\,|\,x^2+y^2+z^2=1,x,y,zは実数 \}
を考え,S 上の定点(0,0,1)\mbox{A} とする.

\mbox{A} とことなる S 上の点 \mbox{P}(x,y,z) に対し,直線 \mbox{AP}xy 平面の交点を \mbox{Q}(u,v,0) とする.

k を正の定数とし,点 \mbox{P}x^2+y^2+z^2=1x\geqq \dfrac{1}{k}y\geqq \dfrac{1}{k}z\geqq \dfrac{1}{k} を満たしながら動くとき,対応する点 \mbox{Q} の動く範囲を uv 平面上に図示せよ.

本問のテーマ
立体射影(極射影)

2024.01.09記
立体射影は球面から極から赤道を含む平面への射影,極射影は球面から極から南極を通り南北の軸に垂直な平面への射影を表すのが一般的である.これら2つの違いは極射影の像を半分に縮小すると立体射影の像となるので本質的な違いはない.本問は立体射影である.

この立体射影は球面 x^2+y^2+(z-1)^2=1 に対する反転であり,平面上の反転の円々対応と同じく,``球々対応''が成立する.但し定義域が S に制限されているので,「球と S の交わり(これは平面と Sの交わりとして表現できる)の像」は球の反転による像となる球(または平面)と Sの像である平面との交わりである「円または直線」となる.ここで像が直線となるのは,平面上の反転の場合と同じく平面と Sの交わりが極 \mbox{A} を通るときである.

本問の場合,3平面 x=\dfrac{1}{k}y=\dfrac{1}{k}z=\dfrac{1}{k} はいずれも \mbox{A} を通らないので,求める答えは 3 つの円で分割された領域のうちのどこかとなる.

[解答]
(i) 0\lt k\lt \sqrt{3} のとき
x^2+y^2+z^2\gt 1 より点 \mbox{P} は存在しないので対応する点 \mbox{Q} の領域は空集合

(ii) \sqrt{3}\leqq k のとき
\mbox{P} は存在するので対応する点 \mbox{Q} の領域は空集合ではない.

このとき,\vec{\mbox{AP}}=t\vec{\mbox{AQ}} なる t\gt 0 が存在するので
x=tuy=tvz-1=-t
が成立する.ここで x^2+y^2+z^2=1 により
t^2(u^2+v^2+1)=2t
となるが, t\gt 0 より t=\dfrac{2}{u^2+v^2+1} となり,
x=\dfrac{2u}{u^2+v^2+1}y=\dfrac{2v}{u^2+v^2+1}z=\dfrac{u^2+v^2-1}{u^2+v^2+1}
が成立する.

よって求める uv 平面上の領域は
\dfrac{2u}{u^2+v^2+1}\geqq\dfrac{1}{k}\dfrac{2v}{u^2+v^2+1}\geqq\dfrac{1}{k}\dfrac{u^2+v^2-1}{u^2+v^2+1}\geqq\dfrac{1}{k}
整理して
(u-k)^2+v^2\leqq k^2-1…①,
u^2+(v-k)^2\leqq k^2-1…②,
u^2+v^2\geqq \dfrac{k+1}{k-1}…③
となり,これを図示すれば良い(図示略).

但し,k=\sqrt{3} のときは点 \mbox{P} が1点なので点 \mbox{Q} の領域も1点となる.
その1点は①②の共通部分は u=v について対称であり,それと u^2+v^2\geqq \dfrac{(\sqrt{3}+1)^2}{2} をみたす部分であるから
u^2=v^2=\dfrac{(\sqrt{3}+1)^2}{4} となり,\left(\dfrac{\sqrt{3}+1}{2},\dfrac{\sqrt{3}+1}{2}\right) となる.