[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1998年(平成10年)東京大学後期-数学

2024.02.07記

[1] xy 平面上の点 \mbox{P}_1=(0,10) を中心とし半径が 1 の円周 C_1 と,\mbox{P}_2=(0,0) を中心とし半径が 2 の円周 C_2 を与える.xy の平面上の3点 \mbox{Q}\mbox{R}\mbox{S} を頂点とし,角 \angle\mbox{QRS} が直角になるような直角二等辺三角形 \triangle\mbox{QRS} に関して次の問いに答えよ.

(1) 点 \mbox{Q} が円周C_1上を動き,点 \mbox{R} が円周C_2上を動くとき,第3の頂点 \mbox{S} が動いた軌跡を求めよ.

(2) さらに,直線 x+2y=10 の上にある点 \mbox{P}_3 を中心とする半径 \sqrt{2} の円周 C_3を与える.点 \mbox{P}_3 を適当にとったところ,頂点 \mbox{Q}\mbox{R}\mbox{S} がそれぞれ円周 C_1C_2C_3 上にあり,角 \triangle\mbox{QRS} が直角になるような直角二等辺三角形 \triangle\mbox{QRS} がただ一つだけ定まったという.このときの \mbox{P}_3 の座標を求めよ.

[2] パラメタ r\theta\Bigl(r\gt 00\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{4}\Bigr) に対して x の関数 f(x)=r\sin(x+\theta) を考える.

(1) r\theta が等式
\displaystyle\int_{0}{2\pi} {(\sin x-f(x))}^2\,dx
=\displaystyle\int_{0}{2\pi} \sin^2 x\,dx \quad\quad(E)
をみたしているとき,r\theta の関数として表せ.

(2) 式(E)を満たしながら r\theta を動かしたとき,0\leqq x\leqq \pi における y=f(x) のグラフは xy 平面上を動く.これらのグラフが動く範囲 D を求め,図示せよ.

(3) 図形 D の面積を求めよ.

[3] グラフ G=(V,W) とは有限個の頂点の集合 V=\{\mbox{P}_1,…,\mbox{P}_n\} とそれらの間を結ぶ辺の集合 W=\{E_1,…,E_m\} からなる図形をする.各辺E_jは丁度2つの頂点\mbox{P}_{i_1}\mbox{P}_{i_2} (i_1 \neq i_2)を持つ.頂点以外での辺同士の交わりは考えない.さらに,各頂点には白か黒の色がついていると仮定する.

例えば,図1のグラフは頂点が n=5 個,辺が m=4 個あり,辺 E_ii=1,…,4)の頂点は \mbox{P}_i\mbox{P}_5 である.\mbox{P}_1\mbox{P}_2 は白頂点であり,\mbox{P}_3\mbox{P}_4\mbox{P}_5 は黒頂点である.

出発点とするグラフ G_1(図2)は,n=1m=0 であり,ただ1つの頂点は白頂点であるとする.

与えられたグラフ G=(V,W) から 新しいグラフ G'=(V',W') を作る.2 種類の操作を以下で定義する.これらの操作では頂点と辺の数がそれぞれ1だけ増加する.

(操作1)この操作は G の頂点 \mbox{P}_{i_0}1 つ選ぶと定まる.V'V に新しい頂点 \mbox{P}_{n+1} を加えたものとする.W'W に新しい辺 E_{m+1} を加えたものとする.
E_{m+1} の頂点は \mbox{P}_{i_0}\mbox{P}_{n+1} とし,G' のそれ以外の辺の頂点は G での対応する辺の頂点と同じとする.G において頂点 \mbox{P}_{i_0} の色が白又は黒ならば,G' における色はそれぞれ黒又は白に変化させる.それ以外の頂点の色は変化させない.また \mbox{P}_{n+1} は白頂点にする(図3).


(操作2)この操作はGの辺 E_{j_0} を1つ選ぶと定まる.
V'V に新しい頂点 \mbox{P}_{n+1} を加えたものとする.W'W から E_{j_0} を取り去り,新しい辺 E_{m+1}E_{m+2} を加えたものとする.E_{j_0} の頂点が \mbox{P}_{i_1}\mbox{P}_{i_2} であるとき,E_{m+1} の頂点は \mbox{P}_{i_1}\mbox{P}_{n+1} であり,
E_{m+2} の頂点は \mbox{P}_{i_2}\mbox{P}_{n+1} であるとする.
G' のそれ以外の辺の頂点は G での対応する辺の頂点と同じとする.G において頂点 \mbox{P}_{i_1} の色が白又は黒ならば,G' における色はそれぞれ黒又は白に変化させる.\mbox{P}_{i_2} についても同様に変化させる.それ以外の頂点の色は変化させない.また \mbox{P}_{n+1} は白頂点にする(図4).



出発点のグラフ G_1 にこれら 2 種類の操作を有限回繰り返し施して得られるグラフを可能グラフと呼ぶことにする.次の問いに答えよ.


(1) 図5の 3 つのグラフはすべて可能グラフであることを示せ.ここで,すべての頂点の色は白である.

(2) n自然数とするとき,n 個の頂点を持つ図6のような棒状グラフが可能グラフになるために n の満たすべき必要十分条件を求めよ.ここで,すべての頂点の色は白である.

https://spherical-harmonics.hateblo.jp/entry/Todai/1998/Kouki_1
https://spherical-harmonics.hateblo.jp/entry/Todai/1998/Kouki_2
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