[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2001年(平成13年)東京大学前期-数学(理科)[5]

[5] 容量 1 リットルの m 個のビーカー(ガラス容器)に水が入っている.m\geqq  4 で空(から)のビーカーは無い.入っている水の総量は 1 リットルである.また x リットルの水が入っているビーカーがただ一つあり,その他のビーカーには x リットル未満の水しか入っていない.

このとき,水の入っているビーカーが 2 個になるまで,次の(a)から(c)までの操作を,順に繰り返し行う.

(a) 入っている水の量が最も少ないビーカーを一つ選ぶ.

(b) さらに,残りのビーカーの中から,入っている水の量が最も少ないものを一つ選ぶ.

(c) 次に,(a)で選んだビーカーの水を\bra{b}で選んだビーカーにすべて移し,空になったビーカーを取り除く.

この操作の過程で,入っている水の量が最も少ないビーカーの選び方が一通りに決まらないときは,そのうちのいずれも選ばれる可能性があるものとする.

(1) x\lt \dfrac{1}{3} のとき,最初に x リットルの水の入っていたビーカーは,操作の途中で空になって取り除かれるか,または最後まで残って水の量が増えていることを証明せよ.

(2) x\gt \dfrac{2}{5} のとき,最初に x リットルの水の入っていたビーカーは,最後まで x リットルの水が入ったままで残ることを証明せよ.

2020.09.04記
(1) は対偶をとると,x\geqq\dfrac{1}{3} は最初に x リットルの水の入っていたビーカーが最後まで残って いて,かつ水の量が増えていないための必要条件である.そして(2)は十分条件となる。

[解答]
(1) 対偶である「最初に x リットルの水の入っていたビーカーが最後まで残っていて、かつ水の量が増えていないならば x\geqq\dfrac{1}{3} である」ことを証明する.

残りのビーカーが3本になった状態において、最後まで残っていて、かつ水の量が増えていないならば、この状態において選ばれてはいけないので、この状態において3本のビーカーのうち、水の量が最大のものが x リットル入っているビーカーであることが必要である。3本のビーカーにある水の合計は1リットルであるから、x\geqq\dfrac{1}{3} が必要であるから、対偶が証明され、題意も証明された。

(2) 最初に x リットルの水の入っていたビーカーが、最後まで x リットルの水が入ったままで残るためには、最後の4本のビーカーにおいて、最初に x リットルの水の入っていたビーカー以外の3つのビーカーに入っている水の量の少ないもの2つを合計したときに必ずx リットル未満となっていれば十分である。

最初に x リットルの水の入っていたビーカー以外の3つのビーカーに入っている水の量は1-x リットルであるから、水の少ないもの2つの合計は必ず (1-x)\times\dfrac{2}{3} 以下となるので
 (1-x)\times\dfrac{2}{3}\lt x\,\Longleftrightarrow\, x\gt\dfrac{2}{5}
であれば十分である。よって題意は証明された。