[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2001年(平成13年)東京大学前期-数学(理科)[6]

[6] コインを投げる試行の結果によって,数直線上にある 2\mbox{A}\mbox{B} を次のように動かす.

表が出た場合:点 \mbox{A} の座標が点 \mbox{B} の座標より大きいときは,\mbox{A}\mbox{B} を共に正の方向に1動かす.そうでないときは,\mbox{A} のみ正の方向に1動かす.

裏が出た場合:点 \mbox{B} の座標が点 \mbox{A} の座標より大きいときは,\mbox{A}\mbox{B} を共に正の方向に1動かす.そうでないときは,\mbox{B} のみ正の方向に1動かす.

最初 2\mbox{A}\mbox{B} は原点にあるものとし,上記の試行を n 回繰り返して \mbox{A}\mbox{B} を動かしていった結果,\mbox{A}\mbox{B} の到達した点の座標をそれぞれ ab とする.

(1) n 回コインを投げたときの表裏の出方の場合の数 2^n 通りのうち,a=b となる場合の数を X_n とおく.X_{n+1}X_n の間の関係式を求めよ.

(2) X_n を求めよ.

(3) n 回コインを投げたときの表裏の出方の場合の数 2^n 通りについての a の値の平均を求めよ.

2020.09.04記
期待値が範囲外になったので,平均という言葉になっている.

実験してみれば,AとBは2以上離れないことがわかる.

2021.01.17記(2020.09.04記の略解を補足)

[解答]
(1) n 回コインを投げたときの \rm A,B の座標を a_n,b_n とする.

a_nb_n が等しいとき,a_{n+1}b_{n+1} の差は 1 となり,
a_nb_n の差が 1 となるとき,a_{n+1}b_{n+1} の差は 0 または 1 となる.

a_0=b_0 により,a_nb_n の差は 0 または 1 となる.

a_n-b_n=-1,1 となる場合の数を Y_n,Z_n とすると対称性から Y_n=Z_n であり, X_n+Y_n+Z_n=2^n となる.

X_{n+1}=Y_n+Z_n であるから,X_{n+1}=2^n-X_n となる.

(2) \dfrac{X_n}{2^n}=p_n とおくと
 2p_{n+1}=1-p_n となるので,p_1=0 から
p_n=-\dfrac{1}{3}\Bigl(-\dfrac{1}{2}\Bigr)^{n-1}+\dfrac{1}{3}
となり
X_n=\dfrac{2\times (-1)^n+2^n}{3}

(3) n 回後の a の平均と b の平均は等しいので,a+b の平均 E_n を求める.

a_n-b_n=0 のとき,a+b は平均 1=\dfrac{3}{2}-\dfrac{1}{2} 増える.
a_n-b_n=\pm 1 のとき,a+b は平均 \dfrac{3}{2} 増える.

よって,
 E_{n+1}=E_n+\dfrac{3}{2}-\dfrac{1}{2}p_n
が成立する.E_1=1 を用いて
 E_n=E_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} \Bigl(\dfrac{3}{2}-\dfrac{1}{2}p_n\Bigr)
となり,これを計算すると
E_n=\dfrac{4}{3}n-\dfrac{2}{9}-\dfrac{1}{9}\Bigl(-\dfrac{1}{2}\Bigr)^{n-1}
となり,求める平均はこれの半分の
\dfrac{2}{3}n-\dfrac{1}{9}-\dfrac{1}{9}\Bigl(-\dfrac{1}{2}\Bigr)^{n}
となる.