[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2002年(平成14年)東京大学前期-数学(文科)[3]

2020.08.03記

[3] 2つの関数
f(x)=ax^3+bx^2+cx
g(x)=px^3+qx^2+rx
が次の 5 つの条件を満たしているとする.
f(0)=g'(0)f(-1)=-1f'(-1)=0g(1)=3g'(1)=0
ここで f(x)g(x)導関数をそれぞれ f'(x)g'(x) で表している.このような関数のうちで,定積分
\displaystyle\int_{-1}^{0} { \{ f''(x) \} }^2\,dx+\displaystyle\int_{0}^{1} { \{ g''(x) \} }^2\,dx
の値を最小にするような f(x)g(x) を求めよ.ただし,f''(x)g''(x) はそれぞれ f'(x)g'(x)導関数を表す.

本問のテーマ
スプライン補間
エルミート補間(TBA)

2020.08.03記
2階微分が連続となることが知られており,
与えられている  f(0)=g(0)(=0) f'(0)=g'(0) という条件以外に,2階微分が連続となる条件

 f''(0)=g''(0)

が成立する.よって  f(x)=ax^3+bx^2+cx g(x)=px^2+bx^2+cx と、f(x) g(x) の2次以下が一致する.

あとは残りの条件から -a+b-c=-1 p+b+c=3 3a-2b+c=0 3p+2b+c=0 となり,これを解いて a=1 b=3 c=3 p=-3 となり,
 f(x)=x^3+3x^2+3xg(x)=-3x^3+3x^2+3
となる.

スプライン補間において,2階微分の連続性を保証するための基底として B(x;k)=\left\{ \begin{matrix} (x-k)^3 & (x\geqq k) \\ 0 & (x\leqq k) \end{matrix}\right. が用いられる.
x\leqq k の範囲には影響を与えずに,これまでの情報からうまくその先を2階微分の連続性を保証しながら繋げていく関数となっている.
この関数の線型結合によって補間を行なうのがスプライン補間である.

[大人の解答]
 B(x;k)=\left\{ \begin{matrix} (x-k)^3 & (x\geqq k) \\ 0 & (x\leqq k) \end{matrix}\right. とおくと,f(x)g(x) を繋いだ関数はスプライン関数
 F(x)=p +q (x+1)+r(x+1)^2 +s B(x;-1)+t B(x;0)となる.
 F(-1)=f(-1) F'(-1)=f'(-1)=-1 F(1)=g(1)=3 F'(1)=g'(1)=0 より
p=-1q=r=0s=1t=-4 となる.

よって, F(x)=-1+B(x;-1)-4B(x;0) となるので,
-1\leqq x\leqq 0 のとき  F(x) =-1+(x+1)^3 =x^3+3x^2+3x
0\leqq x\leqq 1 のとき  F(x) =-1+(x+1)^3-4x^3 =-3x^3+3x^2+3x
となる.

もちろん、2階微分の二乗の積分を最小にするときに2階微分が連続になることの証明の方が、本問を真面目に解くより難しい。

境界条件をうまく利用するためには部分積分を利用すると計算が楽になる.文系の出題なので部分積分は範囲外であるが,,,.

[解答]
与えられた条件は  f(-1)=-a+b-c=-1f'(-1)=3a-2b+c=0f'(0)=c=r=g'(0)g(1)=p+q+c=3g'(-1)=3p+2q+c=0 であるから,整理して a=c-2b=2c-3p=c-6q=9-2cr=c となる.

部分積分を用いると,f'''(x)=6ag'''(x)=6p であるから,
 \displaystyle \int_{-1}^{0} \{f''(x)\}^2 dx \displaystyle =\Bigl[ f''(x)f'(x)\Bigr]_{-1}^{0}-\int_{-1}^{0} 6af'(x) dx\displaystyle =2bc-6a\Bigl[f(x)\Bigr]_{-1}^{0} \displaystyle =2bc-6a
 \displaystyle \int_{0}^{1} \{g''(x)\}^2 dx \displaystyle =\Bigl[ g''(x)g'(x)-6pg(x)\Bigr]_{0}^{1}\displaystyle =-2qr-18p
となる.

よって
I=2bc-6a-2qr-18p=2(2c-3)c-6(c-2)-2(9-2c)c-18(c-6)=8c^2-48c+120=8(c-3)^2+48
となり,これはc=3のときに最小となる.

このとき a=1 b=3 p=3 q=3r=3 となり,
 f(x)=x^3+3x^2+3xg(x)=-3x^3+3x^2+3
となる.