[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1994年(平成6年)東京大学前期-数学(理科)[4]

2024.01.10記

[4] 0\lt c\lt 1 とする.0\leqq x \lt 1 において連続な関数 f(x) に対して
f_1(x)=f(x)+\displaystyle\int_{0}^{c} f(t)\,dt
f_2(x)=f(x)+\displaystyle\int_{0}^{c} f_1(t)\,dt
とおく.以下,関数 f_3(x)f_4(x),… を順次
f_n(x)=f(x)+\displaystyle\int_{0}^{c} f_{n-1}(t)\,dt
n=34,…)により定める.また,g(c)=\displaystyle\int_{0}^{c} f(t)\,dtとし,n=123,…に対しg_n(c)=\displaystyle\int_{0}^{c} f_n(t)\,dt とおく.このとき,0\lt x\lt 1 を満たす任意の x に対し xf(x)=g(x)+x\displaystyle\lim_{n\to\infty} g_n(x) が成り立ち,さらに f(0)=1 となるような関数 f(x) を求めよ.

2024.01.12記

[解答]
g_0(c)=g(c) とおくと任意の自然数 n について
f_n(x)=f(x)+g_{n-1}(c)
が成立するので,両辺を 0 から c まで積分すると
g_n(c)=g(c)+c\cdot g_{n-1}(c)n=1,2,…
という2項間漸化式が得られる.よって
g_n(c)=c^n\left(g_0(c)-\dfrac{g(c)}{1-c}\right)+\dfrac{g(c)}{1-c}=-\dfrac{c^n\cdot g(c)}{1-c}+\dfrac{g(c)}{1-c}
が成立する.

よって \displaystyle\lim_{n\to\infty} g_n(x)=\dfrac{g(x)}{1-x} となり,xf(x)=g(x)+x\cdot\dfrac{g(x)}{1-x},つまり
g(x)=x(1-x)f(x)
が任意の x について成立する.g(x)f(x) の原始関数の1つであることに注意して,この両辺を微分すると f(x)=(1-2x)f(x)+x(1-x)f'(x),つまり
\dfrac{f'(x)}{f(x)}=\dfrac{2}{1-x}
となるので,両辺を積分することにより連続関数 f(x)f(x)=\dfrac{C}{(1-x)^2} の形であり,f(0)=1 から
f(x)=\dfrac{1}{(1-x)^2}
となる.