2020.08.11記
とおく. を満たす実数 を初期値として数列 を
()
で定める.このとき次の問に答えよ.
(1) を満たす, なる実数 をすべて求めよ.
(2) が(1)で求めた の値の1つに等しくなるような初期値 をすべて求めよ.
(3) 条件「ある に対して, が(1)で求めた の値の1つに等しくなる」をみたす初期値 はどのような実数として表されるか.
(4) 初期値 が(3)の条件を満たさないとき, となるような が存在することを示せ.
(5) 数列 が収束するために初期値 が満たすべき必要十分条件を求めよ.
2020.08.11記
テント写像(パイこね変換)については
パイこね変換 - 球面倶楽部 零八式 mark II
を参照のこと.
関連した入試問題については
1998年(平成10年)東京大学前期-数学(文科)[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
2000年(平成12年)東京大学前期-数学(理科)[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
も参照のこと.
(1) 写像 の不動点を求める.これは単純な計算によって となる.
(2)(3) 写像 で の不動点にうつる点を求める.つまり を帰納的に解くことになるが,
の解が
となることを利用すると, と の中点,及び,その値をから引いたものとなる.
よって, で の不動点にうつる点は と との中点から ,その値を から引いた となり,()となる.
で の不動点にうつる点は()と との中点から(),その値を から引いた ()となり,結局,()となる.
同様に で の不動点にうつる点は()と との中点から(),その値を から引いた ()となり,結局,()となる.
折れ線を真っ直ぐにして,縦方向に縮めてもよい.
(1) 折れ線を真っ直ぐにすると,と,の交点の 座標を求めれば良く,となる.
(2)(3) のとき, から得られる折れ線を真っ直ぐにすると,と,
軸に平行な 本の直線 (),()
との交点の 座標を求めれば良いが,これら 軸に平行な 本の直線は ごとに等間隔に並んでいるので,
()
と表すことができる.
とおくと, と ()との交点の 座標を求めれば良く,それは
()
となり,これが である.
(4)はパイこね変換のエルゴード的はふるまいに関する出題になっており,
カントール集合 - 球面倶楽部 零八式 mark II
とも関連がある.
ここで閉区間 について , と定義する.
テント写像によるパイこね変換を考えるには、やはり二進法がわかりやすい.
でも説明は難しい.あまり良くできていない.
(4) は(3)の条件をみたすので, で考える.
を二進小数で表現したときに、 であったとする.
このとき, である.
とおく(0と1の入れ換え)と,
(i) ならば (1桁ずらす)
(ii) ならば (1桁ずらして0と1を入れ換える)
が成立する.但し,0と1の入れ換えのとき,有限小数の場合,末尾に0が無限個続くと考えて,
となるので,末尾の1は実質影響を受けないことがわかる.
ここで(i)(ii)より, ならば, と2桁ずらすだけになっていることがわかるので,
の二進小数表示の小数点第位()に初めて1が登場するとする.
そして初めて1が登場した後,
(a) 11または00が登場しない,つまり無限小数として1と0が繰り返し登場する
(b) 11または00が登場するまでにがが組続くとし,
(b-1) と続く場合,(b-2) と続く場合
が考えらえる.
(b-1) の場合, となる.
(b-2) の場合, となるので,となる.
よって(b)の場合はとなるようなが存在する.
(a) の場合, だから , つまり, となり,(3)の条件をみたす数だから,(3)の条件をみたさないならば,かならず(b)の場合となり,題意は証明された.
(5) が(3) の条件をみたすときはいずれまたは となり,数列は収束する.
そうでない場合, となり,となる.
もちろん, は(3)の条件をみたさないので(みたしているならもみたすことになり矛盾)、
いずれ以上となり,その次に以下となる.
このように 以上となっては以下となることを繰り返すので,(3)の条件をみたさないときは収束しない.
以上から,求める必要十分条件は(3)の条件をみたすことである.