[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2002年(平成14年)東京大学前期-数学(理科)[3]

2024.02.13記

[3] xyz 空間内の原点 \mbox{O}(0,0,0) を中心とし,点 \mbox{A}(0,0,-1) を通る球面を S とする.S の外側にある点 \mbox{P}(x,y,z) に対し,\mbox{OP} を直径とする球面と S との交わりとして得られる円を含む平面を L とする.点 \mbox{P} と点 \mbox{A} から平面 L へ下した垂線の足をそれぞれ \mbox{Q}\mbox{R} とする.このとき,\mbox{PQ} \leqq \mbox{AR} であるような点 \mbox{P} の動く範囲 V を求め,V の体積は 10 より小さいことを示せ.

本問のテーマ

反転

2021.01.18記
まずは,束の考え方を用いて L (とxz 平面の交線)の方程式を導く解法.

[解答]
条件は z 軸に関する回転対称性をもつので,xz 平面での切り口を考え,それを z 軸まわりに回転させれば良い.

{\rm P}(p,q)p^2+q^2\gt 1)とおくと,{\rm OP} を直径とする円上の点{\rm X}(x,y) について \angle\rm OXP=90^{\circ} であるから,|\vec{\rm OX}|^2=\vec{\rm OX}\cdot\vec{\rm OP} となる.つまり,x^2+z^2=px+qz となる.
よって,x^2+z^2=1 との2交点({\rm O}は単位円の内部,{\rm P}は単位円の外部だから2円は2交点をもつ)を通る直線は
px+qz=1 である.
よって求める条件は {\rm A}px+qz=1 の負領域,{\rm P} が正領域にあることから
\dfrac{p^2+q^2-1}{\sqrt{p^2+q^2}}\leqq \dfrac{q+1}{\sqrt{p^2+q^2}},つまり p^2+\Bigl(q-\dfrac{1}{2}\Bigr)^2\leqq \Bigl(\dfrac{3}{2}\Bigr)^2

よって求める体積 VV=\dfrac{4}{3}\pi\Bigl(\dfrac{27}{8}-1\Bigr)=\dfrac{19\pi}{6}\lt \dfrac{19\times 3.15}{6}=9.975\lt 10

次に反転を用いて条件を導く解法.一応 \sin\theta0 か否かで場合分けしておいた.

[解答]
条件は z 軸に関する回転対称性をもつので,xz 平面での切り口を考え,それを z 軸まわりに回転させれば良い.

このとき,xz 平面で,\rm P を単位円に関して反転させたものが \rm Q である.
よって,{\rm P}(x,z)=(r\cos\theta,r\sin\theta)r\gt 1) とおくと,
{\rm Q}\Bigl(\dfrac{1}{r}\cos\theta,\dfrac{1}{r}\sin\theta\Bigr) となる.

(i) \sin\theta\neq 0 のとき,
Lxz 平面の切り口は (\cos\theta)x+(\sin\theta)z=\dfrac{1}{r} となる(ヘッセの標準形).

ここで,Lz 軸の交点を {\rm K} とおくと,{\rm K}\Bigl(0,\dfrac{1}{r\sin\theta}\Bigr) だから,
{\rm AR}:{\rm OQ}={\rm KA}:{\rm KO}=(r\sin\theta+1):1
となる.よって,
{\rm AR}=(r\sin\theta+1){\rm OQ}=\dfrac{r\sin\theta+1}{r^2-1}{\rm PQ}{\rm PQ}=r-\dfrac{1}{r}
が成立し,求める {\rm P} の条件は r\sin\theta+1\lt r^2-1 となる.

(ii) \sin\theta=0 のとき,
Lxz 平面の切り口は
x=\dfrac{1}{r} となる.よって,
{\rm AR}=\dfrac{1}{r}=\dfrac{1}{r^2-1}{\rm PQ}
が成立し,求める {\rm P} の条件は 1\lt r^2-1 となる.
(これは(i)の条件で \sin\theta=0とおいたもの)

(i),(ii) より求める {\rm P} の条件は r\sin\theta+1\lt r^2-1 となり,
x^2+z^2-z\lt 2,つまり x^2+\Bigl(z-\dfrac{1}{2}\Bigr)^2\leqq \Bigl(\dfrac{3}{2}\Bigr)^2 となる.
(以下略)