[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2003年(平成15年)東京大学前期-数学(文科)[4]

2024.02.18記

[4] さいころを振り,出た目の数で 17 を割った余りを X_1 とする.ただし,1 で割った余りは 0 である.

さらにさいころを振り,出た目の数で X_1 を割った余りを X_2 とする.以下同様にして,X_n が決まればさいころを振り,出た目の数で X_n を割った余りを X_{n+1} とする.

このようにして,X_nn=12,… を定める.

(1) X_3=0 となる確率を求めよ.

(2) 各 n に対し,X_n=5 となる確率を求めよ.

(3) 各 n に対し,X_n=1 となる確率を求めよ.

注意:さいころは1から6までの目が等確率で出るものとする.

本問のテーマ

2021.01.28記

[大人の解答]
\vec{X_n}=\begin{pmatrix} P(X_{n}=0) \\  P(X_{n}=1) \\  P(X_{n}=2) \\  P(X_{n}=5) \end{pmatrix} とおくと,\vec{X_{n+1}}=A\vec{X_n} をみたす遷移行列 AA=\dfrac{1}{6}\begin{pmatrix} 6 & 1 & 2 & 2 \\ 0 & 5 & 0 & 2 \\ 0 & 0 & 4 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} となる.

(1) \vec{X_1}=\dfrac{1}{6}\begin{pmatrix} 1 \\  2 \\  2 \\  1 \end{pmatrix}A^2=\dfrac{1}{36}\begin{pmatrix} 36 & 11 & 20 & 18 \\ 0 & 25 & 0 & 12 \\ 0 & 0 & 16 & 5 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} だから,\vec{X_3}=A^2\vec{X_1}=\dfrac{1}{216}\begin{pmatrix} 116 \\  62 \\  37 \\  1 \end{pmatrix} となり,P(X_3=0)=\dfrac{116}{216}=\dfrac{29}{54} となる.

(2) (0,0,0,1)A=\dfrac{1}{6}(0,0,0,1) により
P(X_n=5)=(0,0,0,1)\vec{X_{n}}=\dfrac{1}{6^{n-1}}(0,0,0,1)\vec{X_1}=\dfrac{1}{6^{n-1}}\cdot\dfrac{1}{6}=\dfrac{1}{6^n}

(3) P(X_n=1)=(0,1,0,0)A\vec{X_{n-1}}=\dfrac{5P(X_{n-1}=1)+2P(X_{n-1}=5)}{6}
=\dfrac{5}{6}P(X_{n-1}=1)+\dfrac{2}{6^n} により,
p_n=P(X_n=1)=\alpha\Bigl(\dfrac{5}{6}\Bigr)^{n}+\beta\Bigl(\dfrac{1}{6}\Bigr)^{n} の形.

p_1=\dfrac{1}{3}p_2=(0,1,0,0)A\vec{X_1}=\dfrac{12}{36}=\dfrac{1}{3} だから
5\alpha+\beta=225\alpha+\beta=12 となり,\alpha=\dfrac{1}{2},\beta=-\dfrac{1}{2} となるので,P(X_n=1)=p_n=\dfrac{1}{2}\Bigl(\dfrac{5}{6}\Bigr)^{n}-\dfrac{1}{2}\Bigl(\dfrac{1}{6}\Bigr)^{n} となる.

[解答]
(1) X_1\to X_2\to X_3X_3\neq 0 の場合の数を数える.
1\to 1\to 12\times 5\times 5=50 通り
2\to 2\to 22\times 4\times 4=32 通り
5\to 5\to 51\times 1\times 1=1 通り
5\to 5\to 21\times 1\times 1=1 通り
5\to 5\to 11\times 1\times 2=2 通り
5\to 2\to 21\times 1\times 4=4 通り
5\to 1\to 11\times 2\times 5=10 通り
の全部で 100 通り.よって求める確率は 1-\dfrac{100}{216}=\dfrac{29}{54}

(2) X_n=5 となるのは,X_1=\cdots=X_n=5 となるときのみだから,\dfrac{1}{6^n}

(3) P(X_n=1)=p_n とおくと,X_{n+1}=1 ならば X_n=1,5 であり,1\to 1 なる確率は\dfrac{5}{6}5\to 1 なる確率は\dfrac{1}{3} だから,
p_{n+1}=\dfrac{5}{6}p_n+\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{6^n}
が成立する.P_n=6^np_n とおくと P_{n+1}=5P_n+2P_1=2 となり,これを解くとP_n=\dfrac{5^{n}}{2}-\dfrac{1}{2} となるので p_n=\dfrac{5^n}{2\cdot 6^n}-\dfrac{1}{2\cdot 6^n}

[解答]
(1) X_1\to X_2\to X_3 の場合の数を数える.
0\to 0\to 01\times 6\times 6=36 通り
1\to 1\to 02\times 5\times 1=10 通り
1\to 0\to 02\times 1\times 6=12 通り
2\to 2\to 02\times 4\times 2=16 通り
2\to 0\to 02\times 2\times 6=24 通り
5\to 5\to 01\times 1\times 2=2 通り
5\to 2\to 01\times 1\times 2=2 通り
5\to 1\to 01\times 2\times 1=2 通り
5\to 0\to 01\times 2\times 6=12 通り
の全部で 116 通り.よって求める確率は \dfrac{116}{216}=\dfrac{29}{54}

(2)(3)(略)