[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)九州大学後期-数学[5]

[5]

f(x) を次の条件を満たす3次の多項式とする.

(a) x^3 の係数は1である.
(b) 0,1,-1 ではない複素数 \omega が存在して,すべての自然数 n について f(\omega^n)=0 となる.

以下の問いに答えよ.

(1) \omega=-\dfrac{1}{2}+\dfrac{\sqrt{3}}{2} i または \omega=-\dfrac{1}{2}-\dfrac{\sqrt{3}}{2} i であることを示せ.ただし,i虚数単位とする.

(2) f(x) を求めよ.

(3) g(x) を次の多項式とする.
g(x)=\displaystyle\sum_{n=0}^{2021} x^n=x^{2021}+x^{2020}+\cdots+1

g(x)f(x) で割ったときの余りを求めよ.

2021.03.17記

[解答]

(1) 任意の n について \omega^n が3次方程式 f(x)=0 の解となるので,\omega^n がとりうる値は3種類以下である.

\omega^2=\omega の解は \omega=0,1
\omega^3=\omega の解は \omega=-1,0,1
\omega^3=\omega^2 の解は \omega=0,1
であるから,

\omega\neq -1,0,1 のとき \omega,\omega^2,\omega^3 はすべて異なる

ことがわかる.よって \omega^n がとりうる値は3種類以下であるためには,\omega^4\omega,\omega^2,\omega^3 のいずれかに一致する.

\omega^4=\omega の解は \omega=-\dfrac{1}{2}\pm\dfrac{\sqrt{3}}{2}
\omega^4=\omega^2 の解は \omega=-1,0,1
\omega^4=\omega^3 の解は \omega=0,1
となるので, \omega=-\dfrac{1}{2}\pm\dfrac{\sqrt{3}}{2} であり,このとき \omega\neq0 より \omega^3=1 となり,\omega\neq 1 より \omega^2+\omega+1=0 となる.

(2) f(x)=0 の解が \omega,\omega^2 および \omega^3=1 だから
f(x)=(x-\omega)(x-\omega^2)(x-1)=\{x^2-(\omega+\omega^2)x+\omega^3\}(x-1)=(x^2+x+1)(x-1)=x^3-1
となる.

(3) 求める余りである2次以下の多項式R(x) とおき,商を Q(x) とおくと
g(x)=f(x)Q(x)+R(x)
が成立するので,
R(\omega)=g(\omega)=0R(\omega^2)=g(\omega^2)=0
が成立する.よって R(x)=C(x-\omega)(x-\omega^2)=C(x^2+x+1)
とかける.さらに R(1)=g(1)=2022 であるから,R(x)=\dfrac{2022}{3}(x^2+x+1)=674(x^2+x+1) となる.

(3) g(x)=\dfrac{x^{2022}-1}{x-1}=\dfrac{(x^3)^{674}-1}{x^3-1}\cdot\dfrac{x^3-1}{x-1}=\Bigl(\displaystyle\sum_{k=0}^{673} (x^{3})^k\Bigr)(x^2+x+1)
因数分解でき,x^3-1 で割ることは x^31 に置き換えることだから,求める余りは
\Bigl(\displaystyle\sum_{k=0}^{673} 1^k\Bigr)(x^2+x+1)=674(x^2+x+1)
であることがわかる.

2021.03.22記

[別解]

(1) 任意の n について \omega^n が3次方程式 f(x)=0 の解となるので,\omega^n がとりうる値は3種類以下である.

\omega\neq 0 より |\omega|\neq 0 である.このとき,|\omega|\neq 1 とすると \omega^n は全て異なるため,\omega^n がとりうる値は3種類以下であることを満たさないので |\omega|=1 である.

よって \omega=\cos\theta+i\sin\theta とおくことができ,\omega\neq -1,1 により \theta\pi の整数倍ではない.

\omega^n=\cos n\theta+i\sin n\theta のとりうる値が3種類以下であるためには,4\theta が mod 2\pi\theta,2\theta,3\theta のいずれかに一致する.つまり,3\theta,2\theta,\theta2\pi の整数倍に一致する.よって mod 2\pi\theta=0,\dfrac{2}{3}\pi,\pi,\dfrac{4}{3}\pi のいずれかに一致する.ここで \theta\pi の整数倍ではないので \theta\equiv \pm\dfrac{2}{3}\pi(\mbox{mod}\,2\pi)
となる.

よって \omega=-\dfrac{1}{2}\pm\dfrac{\sqrt{3}}{2} である.

(以下略)