[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2022年(令和4年)東京大学-数学(文科)[4]

2022.02.26記

[4] \rm O を原点とする座標平面上で考える。0 以上の整数 k に対して,ベクトル \vec{v_k}
\vec{v_k}=\left(\cos\dfrac{2k\pi}{3},\sin\dfrac{2k\pi}{3}\right)
と定める。投げたとき表と裏がどちらも \dfrac{1}{2} の確率で出るコインを N 回投げて,座標平面上に点  {\rm X}_{0} {\rm X}_{1} {\rm X}_{2},……, {\rm X}_{N} を以下の規則 (i),(ii) に従って定める。

(i)  {\rm X}_{0} {\rm O} にある。

(ii) n1 以上 N 以下の整数とする。  {\rm X}_{n-1} が定まったとし,  {\rm X}_{n} を次のように定める。

n 回目のコイン投げで表が出た場合,
\vec{{\rm OX}_n}=\vec{{\rm OX}_{n-1}}+\vec{v_k}
により  {\rm X}_n を定める。 ただし,k は1回目から n 回目までのコイン投げで裏が出た回数とする。

n 回目のコイン投げで裏が出た場合, {\rm X}_n {\rm X}_{n-1} と定める。

(1) N = 5 とする。{\rm X}_5\rm O にある確率を求めよ。

(2) N = 98 とする。{\rm X}_{98}\rm O にあり,かつ,表が90回,裏が8回出る確率を求めよ。



[解答]

\vec{v_0} 向きに進むのは裏が 3 で割りきれる数だけ出た次に表,
\vec{v_1} 向きに進むのは裏が 3 で割った余りが1の数だけ出た次に表,
\vec{v_2} 向きに進むのは裏が 3 で割った余りが2の数だけ出た次に表

が出たときである.

また、{\rm X}_N={\rm O} となるのは \vec{v_0} 向きに進んだ数と、\vec{v_1} 向きに進んだ数と、\vec{v_2} 向きに進んだ数の全てが等しいときである.よって表が 3 の倍数回出るときである。

以上から,{\rm X}_N={\rm O} となるのは表が 3 の倍数回出るときであり,それを 3r 回とすると 0 から N-3r までの数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数が重複を許して丁度 r 個ずつ選ばれるときである.

(1) 表が0回のとき:1通り

表が3回のとき:0から2までの3個の数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数は 1 個ずつあるので
1^3=1 通り

表が3回のとき:0から2までの3個の数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数は 1 個ずつあるので
1^3 通り

以上を合計して2通りだから,\dfrac{2}{32}=\dfrac{1}{16} となる.

(2) 表が90回により,0から 8 までの 9 個の数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数は 3 個ずつあるので,重複組合せから ({}_{3}\mbox{H}_{30})^3=({}_{32}\mbox{C}_{30})^3=({}_{32}\mbox{C}_2)^3=2^{12}\cdot 31^3 通りとなる.

よって求める確率は \dfrac{31^3}{2^{86}} である.