[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2015年(平成27年)東京大学前期-数学(理科)[5]

m を2015 以下の正の整数とする.{}_{2015}\mbox{C}_{m} が偶数となる最小の m を求めよ.

2019.01.11記

解説:{2015}_{(10)}=11111011111_{(2)}を2つの数の和に分解したとき、足し算に繰り上がりが生じる最小のmを求めれば良い。そのためには、10_{(2)}=1_{(2)}+1_{(2)}の計算結果が必要となるので、求める答はm=100000_{(2)}=32_{(10)}である。

なお、mの最小性を考えると、 {}_{2015}C_{m}={}_{2015}C_{m-1}\times\frac{2016-m}{m}において、{}_{2015}C_{m-1}が奇数で \frac{2016-m}{m}の分子に偶数が残るような最小のmを求めれば良いことを利用すれば、先程の判定方法を使わなくても解くことができる。m=2^{a}\times K(Kは奇数)とおくと、2016-m=2^5\times 63-2^a\times K=2^a(2^{5-a}\times 63-K)だから \frac{2016-m}{m}=\dfrac{2^{5-a}\times 63-K}{K} の分子に偶数が残るのはa=5であり、このときmが最小になるのはK=1のときである。よってm=32としても良いだろう。

似たようなページを探したら、このようなページがありました。
sky-time-math.hatenablog.jp

なので、{}_nC_rが2で何回割り切れるかについてそのうち考えよう。

(2019.1.12追記)

二項係数は2で何回割れるか - 球面倶楽部 零八式 mark II
により、mが1から31までのとき、(31-m) XOR m=31であるから、
2015_{(10)}=31\times 64+31に対して2015 XOR (2015-m) XOR m=0 となるので、{}_{2015}C_{m}は奇数であることがわかる。

2020.10.18記
何か動画で「東大2015独自解法」で同じ解法があったけど、この解法、それほど珍しくないので、独自っていうのはどうかと思うんだけど。

二項係数の偶奇(解決編) - 球面倶楽部 零八式 mark II
二項係数の偶奇 - 球面倶楽部 零八式 mark II
二項係数が素数 p で割り切れない条件 - 球面倶楽部 零八式 mark II
素数 p で割り切れない二項係数の個数 - 球面倶楽部 零八式 mark II

でも触れたけど、

大学への数学2001年2月号に雲幸一郎さんの「素数で何回割り切れるか」という記事にクンマーの定理とは書いていないが,

「p進展開で a+b を計算するときに"繰り上がり"が何回起こるかで決まります。」

と書いてある.まぁ、雲Kが書いていたことはすっかり忘れていて、2020年7月に別の記事を参照するために大学への数学2001年2月号を見直したら、たまたま載っていて思い出したのだが、これを利用する問題はそこそこ出題されている.

2009年(平成21年)東京大学前期-数学(理科)[1] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
1999年(平成11年)東京大学前期-数学(理科)[5] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
1997年(平成9年)京都大学前期-数学(理系)[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
など

2021.03.23記
ちょっと解答っぽく整理しておく.

[大人の解答]

クンマーの定理により,{2015}_{(10)}=11111011111_{(2)} を2つの数の和に分解したとき,足し算に繰り上がりが生じる最小の m を求めれば良い.繰り上がりを生じさせるためには 10_{(2)}=1_{(2)}+1_{(2)} の計算結果が必要となるので、求める答は m=100000_{(2)}=32_{(10)} である.

普通に解くなら次のようになる.

[解答]

 {}_{2015}\mbox{C}_{m}={}_{2015}\mbox{C}_{m-1}\times\dfrac{2016-m}{m} であるから,\dfrac{2016-m}{m} を既約分数で表現したときに分母に偶数が残るような最小の m を求めれば良い.

m=2^{a}\times K(Kは奇数) とおくと 2016-m=2^5\times 63-2^a\times K=2^a(2^{5-a}\times 63-K) だから \dfrac{2016-m}{m}=\dfrac{2^{5-a}\times 63-K}{K} となる.

1\leqq m\leqq 31 のとき,a\leqq 4 であるから
2^{5-a}\times 63 は偶数となり,2^{5-a}\times 63-K は奇数となるので,\dfrac{2016-m}{m}=\dfrac{2^{5-a}\times 63-K}{K} は分子も分母も奇数の既約分数となるので,{}_{2015}\mbox{C}_m の計算に偶数は登場しないので,計算結果も奇数である.つまり,
{}_{2015}\mbox{C}_1,…,{}_{2015}\mbox{C}_{31} は奇数である.

次に m=32 のとき,a=5K=1 であるから
\dfrac{2016-m}{m}=\dfrac{2^0\times 63-1}{1}=62 は偶数となるので,
{}_{2015}\mbox{C}_{32}={}_{2015}\mbox{C}_{31}\times 62 は偶数である.

以上から求める m32 である.

このあたりの議論をより丁寧に説明させたのが,
2021年(令和3年)東京大学-数学(理科)[4] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
である.