[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1980年(昭和55年)東京大学-数学(理科)[2]

2023.08.22記

[2] 長さ 2 の線分 \mbox{N}\mbox{S} を直径とする球面 \mbox{K} がある.点 \mbox{S} において球面 \mbox{K} に接する平面の上で,\mbox{S} を中心とする半径 2 の四分円(円周の\dfrac{1}{4} の長さをもつ円弧)と線分 \mbox{AB} をあわせて得られる曲線上を,点 \mbox{P}1 周する.このとき,線分 \mbox{NP} と球面 \mbox{K} との交点 \mbox{Q} の描く曲線の長さを求めよ.

2020.11.25記
極射影の円円対応.
ここで、平面を半径が無限大の円だとみなす.

与えられた平面を \Pi とする.
\Pi 上の点 \rm P と球面上の点 \rm Q の間には {\rm NQ:NP=NS}^2=4 という関係が成立する.ベクトルで書けば \vec{\rm NQ}=\dfrac{4}{{\rm NP}^2}\vec{\rm NP}
となる.これは \rm N 中心半径2の円に関する3次元空間における反転を与えられた球 K と平面 \Pi に制限した写像となっており,これを極射影や立体射影と呼ぶ.

本問では,\rm SA=SB=2 という特別な値になっているので,弧、弦の像はともに球と平面の交線であることを利用して解くことができる.そのため極射影の知識は over spec だが,ここでは極射影を使った解答を示しておく.

2020.10.31記

[大人の解答]
\rm AB を含む球として平面 \rm NAB を選ぶと,平面 \rm NAB は反転によって自分自身にうつるので,弦の像は K と平面 \rm NAB の交線 となるので,\rm AB の中点を \rm M とすると \rm NM=\sqrt{6} だから,円の直径は \dfrac{4}{\sqrt{6}}=\dfrac{2\sqrt{6}}{3} となり,円周角は \angle\rm ANB=60^{\circ} だから,その長さは \dfrac{2\sqrt{6}}{9}\pi となる.

\rm AB を含む球として中心 \rm S 半径2の球を選ぶと,その球は \rm N を通り,その対蹠点(中心 \rm S に関して対称な点)を \rm R とし,\rm R の像を \rm T とすると \rm NT=\dfrac{4}{NR}=1 だから,\rm T は球 K の中心である.よって,中心 \rm S 半径2の球の像は \rm T を通り \rm NT に垂直な平面となるので,弧の像は K の大円,つまり半径2の円でその中心角は90^{\circ} だから,その長さは \dfrac{\pi}{2} となる.

よって求める答は \dfrac{9+4\sqrt{6}}{18}\pi