[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2023年(令和5年)早稲田大学理工学部-数学[2]

2023.12.20記

[1] 赤玉と黒玉が入っている袋の中から無作為に玉を1つ取り出し,取り出した玉を袋に戻した上で,取り出した玉と同じ色の玉をもう1つ袋に入れる操作を繰り返す.以下の問に答えよ.

(1) 初めに袋の中に赤玉が1個,黒玉が1個入っているとする.n 回の操作を行ったとき,赤玉をちょうど k 回取り出す確率を P_n(k)
k=0,1,2,\ldots,n)とする.P_1(k)P_2(k) を求め,さらに P_n(k) を求めよ.

(2) 初めに袋の中に赤玉が r 個,黒玉が b 個(r\geqq 1,b\geqq 1)入っているとする. n 回の操作を行ったとき, k 回目に赤玉が,それ以外ではすべて黒玉が取り出される確率を Q_n(k)k=0,1,2,\ldots,n)とする.Q_n(k)k によらないことを示せ.

本問のテーマ
ポリアの壺

2023.12.20記
(1) はポリアの壺
(2) はポリアの壺に囚われると難しくなる.

[解答]
(1) 初めに袋の中に赤玉が1個,黒玉が1個入っているので P_1(0)=P_1(1)=\dfrac{1}{2} である.
P_2(0)=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{2}{3}=\dfrac{1}{3}(黒黒),
P_2(1)=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{3}=\dfrac{1}{3}(黒赤+赤黒),
P_2(2)=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{2}{3}=\dfrac{1}{3}(赤赤)
である.

k によらず P_n(k)=\dfrac{1}{n+1} であることを帰納法で示す.

n=1 のときは既に示した.

n=m のときの成立を仮定する.

P_{m+1}(0)=P_m(0)\cdot\dfrac{m+1}{m+2}=\dfrac{1}{m+1}\cdot\dfrac{m+1}{m+2}=\dfrac{1}{m+2}
P_{m+1}(k)=P_m(k-1)\cdot\dfrac{k}{m+2}+P_m(k)\cdot\dfrac{m+2-(k+1)}{m+2}=\dfrac{1}{m+1}\cdot\dfrac{m+1}{m+2}=\dfrac{1}{m+2}
k=1,\ldots,m
P_{m+1}(m+1)=P_m(m)\cdot\dfrac{m+1}{m+2}=\dfrac{1}{m+1}\cdot\dfrac{m+1}{m+2}=\dfrac{1}{m+2}

により n=m+1 のときも成立する.

よって数学的帰納法により任意の自然数 n について
P_n(k)=\dfrac{1}{n+2}0\leqq k\leqq n
が成立する.

(2) Q_n(k) の分母は r+b から r+b+(n-1) からまでの積で,分子は赤玉を取り出したときは r となり,それ以外は黒玉の個数の変化である b から b+(n-2) までの積だから k にはよらない.

ちなみに Q_n(k)=\dfrac{(r+b-1)!}{(n+r+b-1)!}\cdot r\cdot\dfrac{(n+b-2)!}{(b-1)!} となる.