2022.11.03記
レーザー照射実験を回同一の物質 X に繰り返し行うとき,次の問いに答えよ.なお,初回のレーザー照射実験を行う前の物質 X は青色の状態にあるとし,,,は照射実験の回数に関係なく一定とする.
(1) がのとき,回目のレーザー照射実験後に物質 X が青色の状態である確率および赤色の状態である確率を,,を用いて表せ.
(2) がでないとき,方程式
の2つの解を ,()として,回目のレーザー照射実験後に物質 X が赤色の状態である確率を ,,, を用いて表せ.
(3) がでないとき,回目のレーザー照射実験後に物質 X が青色の状態である確率を ,,, を用いて表せ.
2022.12.11記
隣接3項間漸化式の一般項は,特性方程式と呼ばれるの2解を,とすると
と書けることは良く知られている.そこで(2)の2次方程式も,赤色の状態である確率に関する漸化式を作るために,青色の状態である確率や灰色の状態である確率を消去すれば自然と導かれるはずである.なお,行列を利用して連立漸化式を解く手法を知っていれば,(2)の2次方程式はケーリー=ハミルトンの定理と関係がある.
レーザーを回()照射したときに
青色,赤色,灰色の状態である確率をそれぞれ,,とすると
,
……①
……②
が成立する.
(1) により
,
……③,
……④
が成立する.から
だから,帰納的に
……⑤
となり,をに代入して
……⑥
となる.ここで
,
とおくと⑥は
と変形できるので,数列
は,
初項
,
公比の等比数列となり,
つまり
が成立する.このとき
である.
(2) 漸化式によりである.
,,,とおくと,
①②は
……⑦,
……⑧
となる.さて
より
……⑨
一方,⑧の番号を1つずらすと
だから,これに⑨を代入してを消去すると
となり,からを元に戻すと
……⑩
となる.ここで
の解が,()だから,⑩は
,
と変形できる.よって,数列は
初項,公比の等比数列,
数列は
初項,公比の等比数列
となり,
……⑪,
……⑫
が成立する.よってより
……⑬
となる.
(3) ②⑬により,
()となる.
行列を用いて連立漸化式を表現すると,漸化式の解法は行列の乗を
求める問題に帰着できる.行列の乗を求める手法はいくつかあるが,
ここでは多項式の割り算を利用する手法を用いる.
具体的には
をみたす
,()が存在するとき,
をで割った余りが
となることから
が成立することを利用する(以下ではこの議論は省略する).
ちなみに,をで割った余りは暗算で求まる.なぜなら,この余りをとすると,は1次式であり,剰余定理により,が成立することから,2点,を通る直線と同じ式になるからである.
であり,
であるから,
となる.
ここで,ケーリー=ハミルトンの定理により
(は零行列)
が成立する.
であるから,とおくと,であり,
となる.よって
となる.整理して
,
となる.
(2)(3) であり,
であるから,
となる.ここで,ケーリー=ハミルトンの定理により
(は零行列)が成立する.
の解を,()とおくと,
となる.よって
となる.整理して
となる.ここでを用いて変形すると
解答と同じを得る.
隣接3項間漸化式は特性方程式である2次方程式が重解をもつか否かで解法が異なる.本問では,問題文に2次方程式
…(■)
の解,がをみたすと明言しているので,確認せずに,として良いだろう.
なお,と,不等号で結ばれているので,は実数となるが,,が虚数であったとしても解法は同じで,結果も同じ形となる(実数を表現するのに虚数を用いるのは少々気持ち悪いが…).
さて,(■)の判別式をとすると,
となり,,,はいずれも正の実数であるから,となり,(■)は異なる2つの実数解をもつことが確認できる.