[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2020年(令和2年)九州大学後期数学[5]

[5]

以下の規則にしたがって数直線上を移動する点 \rm A を考える.

(規則)点 \rm A が座標 x にあるとき,表が出る確率が \alpha(0\lt\alpha\lt 1) のコインを投げて,表が出たら x から \dfrac{x}{2} へ移動し,裏が出たら x から 1-\dfrac{x}{2} へ移動する.

\rm A がはじめに座標 0 にあるとして,事象「上記の規則を適用する操作を n(n\geqq1) 繰り返した直後に点 \rm A が座標 y にある」の確率を記号 P_n(y) で表す.このとき以下の問いに答えよ.

(1) P_1(y)\gt 0 となる y(0\leqq y \leqq1) とその確率 P_1(y) の組をすべて答えよ.

(2) y\lt 0 または y\gt 1 のとき, P_n(y)=0 であることを示せ.

(3) P_n(1) を求めよ.

(4) k自然数とするとき,以下のそれぞれの条件で P_n(2^{-k}) を求めよ.

(i) n \leqq k のとき

(ii) n\gt k のとき

2020.03.13記

[解答]

(1) 次表の通り

y 0 1
P_1(y) \alpha 1-\alpha

(2) 区間 [0,\,1]区間 [0,\,1]に移るので、y < 0y > 1になることはないから、その区間にある確率は0

(3)  0 < x\leqq 1のとき、0 < \dfrac{x}{2} \leqq  \dfrac{1}{2}, \,  \dfrac{1}{2}\leqq 1-\dfrac{x}{2} < 1
であるから、y\neq 0ならば、以降y=0,\,1となることはない。

よってy=1となるのは、y=0の次に裏がでるときだから\alpha^{n-1}(1-\alpha)となる。

(4) y=2^{-k}となるのは、その前が2^{-(k-1)}のときに限る。ここで、y=1の次は必ずy=\dfrac{1}{2}となることに注意しよう。

最初に表が続けて出て最後から数えてk+1回目に裏がでて、最後から数えてk回目は何でも良く、その後の最後のk-1回がすべて表の場合である。

つまり、k+1回目に裏、k回目は何でも良く、それ以外は全て表となる場合であり、そのような場合は高々1通りしかない。

n\leqq kのとき、最後から数えてk+1回目が存在しないので、題意をみたす場合の数は0通りとなり、確率0

n> kのとき、確率\alpha^{n-2}(1-\alpha)

注意)

(2)から、特定のyの値になる方法は1\to\dfrac{1}{2}に移動するためにはどちらでも良いことの不定性を除くと、1通りしかないことがわかる。

なお、n回行なったあとのx座標を表す確率変数をX_nとし、\beta=1-\alphaとおくと最初は次のようになる。

X_1 0 1
確率 \alpha \beta
X_2 0 \dfrac{1}{2} 1
確率 \alpha^2 \beta \alpha\beta
X_3 0 \dfrac{1}{4} \dfrac{1}{2} \dfrac{3}{4} 1
確率 \alpha^3 \alpha\beta \alpha\beta \alpha\beta^2 \alpha^2\beta
X_4 0 \dfrac{1}{8} \dfrac{1}{4} \dfrac{3}{8} \dfrac{1}{2} \dfrac{5}{8} \dfrac{3}{4} \dfrac{7}{8} 1
確率 \alpha^4 \alpha^2\beta \alpha^2\beta \alpha^2\beta^2 \alpha^2\beta \alpha\beta^3 \alpha\beta^2 \alpha\beta^2 \alpha^3\beta

となっている。要は、表を\alpha倍したものと、\beta倍したものを裏返したものを、\dfrac{1}{2}で貼り合わせる形になっている。

ここで、例えば、P(X_5=\dfrac{7}{16})を求めたいとする。この場合、

1 \to \dfrac{1}{2} \to \dfrac{1}{4} \to \dfrac{7}{8} \to \dfrac{7}{16}
の順番にでたのでP(X_5=\dfrac{7}{16})=\beta\cdot 1\cdot\alpha\cdot\beta\cdot\alpha=\alpha^2\beta^2であることがわかる。

2020.03.14記

例えば、P(X_8=\dfrac{29}{32})を求めたいとする。この場合、
0\to 0 \to 1 \to \dfrac{1}{2} \to \dfrac{3}{4} \to \dfrac{3}{8} \to \dfrac{3}{16}\to \dfrac{29}{32}
の順番にでたのでP(X_8=\dfrac{29}{32})=\alpha^5\beta^2となる。

これを二進数と絡めて書くこともできるのだが、結果がまだ単純化されていない。
x\to\dfrac{x}{2}は二進数で1桁右にずらすことに対応し、
x\to1-\dfrac{x}{2}は大雑把には二進数で一番右にある1よりも左の桁の0と1を入れ換えることに対応する