[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)大阪大学-数学(理系)[1]

[1]

a,bab\lt 1 をみたす正の実数とする.xy 平面上の点 {\rm P}(a,b) から,曲線 y=\dfrac{1}{x}(x\gt 0)2 本の接線を引き,その接点を {\rm Q}(s,\dfrac{1}{s}){\rm R}(t,\dfrac{1}{t}) とする. ただし,s\lt t とする.

(1) s および ta,b を用いて表せ.

(2) 点 {\rm P}(a,b) が曲線 y=\dfrac{9}{4}-3x^2 上の x\gt 0y\gt 0 をみたす部分を動くとき,\dfrac{t}{s} の最小値とそのときの a,b の値を求めよ.

2021.02.25記
X=\dfrac{\sqrt{ab}}{a}x=cxY=\dfrac{\sqrt{ab}}{b}y=\dfrac{1}{c}y という線形変換をイメージ

[解答]
(1) y=\dfrac{1}{x}x=u における接線の式は,切片方程式から \dfrac{x}{2u}+\dfrac{uy}{2}=1 でこれが(a,b) を通るので
\dfrac{a}{2u}+\dfrac{ub}{2}=1,つまり bu^2-2u+a=0 となる.この2解が s,t(s\lt t) により s=\dfrac{1-\sqrt{1-ab}}{b}t=\dfrac{1+\sqrt{1-ab}}{b} となる.

(2) ab=k とおくと,\dfrac{t}{s}=\dfrac{1+\sqrt{1-k}}{1-\sqrt{1-k}}=-1+2\dfrac{1}{1-\sqrt{1-k}} は,k が最大のときに最小となる.

b=\dfrac{9}{4}-3a^2 のとき, k=\dfrac{9}{4}a-3a^3=3a\Bigl(\dfrac{3}{4}-a^2\Bigr) だから,a=\dfrac{1}{\sqrt{3}}\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}=\dfrac{1}{2} のときに k が最大値 \dfrac{3}{4} をとる.

このとき,b=\dfrac{3}{2}\dfrac{t}{s}=3 となる.

2021.03.14記
線形変換をイメージを書いているけど伝わらないよなぁ。

X=\dfrac{\sqrt{ab}}{a}x=cxY=\dfrac{\sqrt{ab}}{b}y=\dfrac{1}{c}y という線形変換を考えると,この変換によって t\to cts\to cs となるので \dfrac{t}{s} は不変である.このとき \rm P の像は,C=\sqrt{ab} とおくと,(C,C) となるので,Y=X 上の点 (C,C) から引いた接線の接点について考えれば良いことがわかる.

このとき2接点は Y=X についての対称性から X=T,\dfrac{1}{T}(T\gt 1) の形をしているので,\dfrac{t}{s}=T^2 は接点の大きい方の2乗の値をもつことになる.

図形的に考えると,(C,C)(0\lt C\lt 1) が原点に近いほど接点は(1,1) から離れ,(1,1) に近いほど (1,1) に近づくので,\dfrac{t}{s} が最小となるのは,(C,C) が一番大きくなって (1,1) に一番近くなるときである.

つまり,C^2=ab が一番大きくなる場合を考えれば良い.

よって,y=\dfrac{9}{4}-3x^2 上の点で (x,y) の値が最小となるときに \dfrac{t}{s} が最小になる.

ということ。頭でこれを考えておくと、\dfrac{t}{s}ab の式になり,しかも ab の減少関数になってないとおかしいと考えながら解くことができる.