[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2023年(令和5年)京都大学-数学(理系)[6]

2023.11.23記

[6] p を3以上の素数とする.また, \theta を実数とする.

(1) \cos3\theta\cos4\theta\cos\theta の式として表せ.

(2) \displaystyle\cos\theta=\frac{1}{p} のとき, \displaystyle\theta=\frac{m}{n}\cdot\pi となるような正の整数 mn が存在するか否かを理由を付けて判定せよ.


本問のテーマ
チェビシェフ多項式


2023.11.23記

[解答]
(1) 加法定理を繰り返し用いると,
\cos3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta
\cos4\theta=8\cos^4\theta-8\cos^2\theta+1
となる.

(2) 一般に \cos n\theta\cos\theta の整数係数の n 次式で最高次の係数は 2^{n-1} である.これは数学的帰納法で示せる(略).この多項式T_n(x)=2^{n-1}x^n+\cdots とする.つまり
\cos n\theta=T_n(\cos\theta)
が成立している.

このとき \theta=\dfrac{m}{n}\cdot \pi なる自然数 m,n が存在すると仮定すると,
1=\cos (2n\theta)=T_{2n}(\cos\theta)=2^{2n-1}p^{-2n}+a_{2n-1}p^{-2n-1}+\cdots+a_1 p^{-1} +a_0
a_0a_{2n-1} は整数)
のように表現できる.よって
p^{2n}=2^{2n-1}+a_{2n-1}p+\cdots+a_1 p^{2n-1} +a_0p^{2n}
つまり
2^{2n-1}=\{(1-a_0)p^{2n-1}-a_1 p^{2n-2}-\cdots -a_{2n-1}\}p
と表現できるが,右辺は 3以上の素数 p の倍数で,左辺は p の倍数ではないので矛盾する.

よって,このような自然数 m,n は存在しない.

チェビシェフ多項式を知らない人に「最高次の係数が 2^{n-1}」となることにまで気付かなければいけないのは少し酷かと思う.2023年秋の某東大冠模試でも同じように「最高次の係数が 2^{n-1}」となることにまで使わないといけないチェビシェフ多項式の問題が出題されたが、うーむ、である。